医師の立場からご家族へ

BPAってどんなもの?どこにあるの?
BPAは、プラスチックを硬く透明にするための化学物質で、実は私たちの身近なところにたくさん使われています。 例えば、透明で硬いプラスチックの水筒や哺乳瓶、食品の保存容器。そして、缶詰の内側のコーティングにも使われています。そう、あの毎日使うレジのレシートにも含まれているんです。これらのものから、ごく微量のBPAが食品や私たちの肌を通して体内に入ってくる可能性があります。なぜ子どもたちにとって特に心配なの?
子どもたち、特に胎児や乳幼児は、化学物質の影響を大人よりも受けやすいという特徴があります。内分泌系及び免疫系の細胞や器官が、胎児や乳幼児では発達途上の為、微量の曝露でも影響が残る可能性があることが指摘されているのです。また、体重あたりの摂取量が多くなりがちなこともあります。そして何よりも、体や脳が急激に成長している最中だからです。 BPAは「環境ホルモン」とも呼ばれ、私たちの体の中で女性ホルモンに似た働きをすることが分かっています。ほんの少しの量でも、ホルモンのバランスを乱す可能性があるのです。具体的にどんな影響が考えられるの?
研究が進むにつれて、BPAの健康への影響が次第に明らかになってきました。例えば、子どもの神経発達への影響。集中力の持続や学習能力に関わる可能性も指摘されています。また、肥満や糖尿病などの代謝性疾患、アレルギー症状、さらには思春期早発症との関連も疑われています。 もちろん、「これだけ摂取すると確実に影響が出る」という明確な線引きはまだできていません。しかし、特に成長過程にある子どもたちにとって、不必要な化学物質の曝露はできるだけ避けたいものです。世界ではどうなっているの?
海外では、BPAに対する規制が進んでいます。EUでは哺乳瓶へのBPA使用が2011年から禁止され、フランスではすべての食品容器への使用が禁止されています。アメリカでもFDA(食品医薬品局)がBPAの使用制限を進めており、多くの企業が自主的にBPAフリーの製品に切り替えています。カナダではBPAを「有害物質」に指定するなど、世界各国で予防的な対策が取られ始めています。日本での現状は?
残念ながら、日本では諸外国に比べて規制が遅れているのが現状です。現在のところ、哺乳瓶については自主規制が進み、BPAフリーが当たり前になってきました。しかし、缶詰やプラスチック容器など、他の食品容器についてはまだ規制が十分とは言えません。 とはいえ、意識の高い企業では自主的にBPAフリーの製品を導入する動きも広がっています。私たち消費者が関心を持ち、安全な製品を選ぶことで、市場を良い方向に導くことができるのです。家庭でできる具体的な対策
では、実際にどのようなことに気をつけたらよいでしょうか?まず、新しい食器や水筒を購入するときは「BPAフリー」と表示されている製品を選びましょう。プラスチック製の容器を電子レンジで温めたり、熱い料理を入れたりするのは避けてください。高温になるとBPAが溶け出しやすくなります。缶詰食品を選ぶときは、可能ならば瓶詰めやパウチ包装のものを。そして、レシートは必要がなければもらわない、もらったらすぐにしまうようにしましょう。 特に妊娠中や授乳中のお母さん、小さなお子さんがいるご家庭では、偏った食事を避け、毎食缶詰を中心とするような食生活にならない様、 いろいろな食品をバランスよく摂るように心がけることが大切です。これらの対策を意識してみてください。毎日続けるのは大変かもしれませんが、できることから少しずつ始めることが大切です。おわりに:子どもたちの未来のために
私は医療職として、子どもたちの健やかな成長を見守ることも大きな使命だと考えています。BPAの問題は、決して「危険だ」と騒ぎ立てるものではなく、しかし無視しても良いというものでもありません。科学的な証拠がさらに集まるまで、予防的な対策を取ることが賢明だと思うのです。 私たち一人ひとりの選択が、メーカーさんの意識を変え、社会を変えていく力になります。難しいことはありません。次に食器を選ぶとき、食品を買うとき、ほんの少しだけBPAのことを思い出してください。それが、子どもたちのより健康的な未来につながっていくのですから。 (参考資料:欧州食品安全機関(EFSA)最新評価書、米国小児科学会見解、環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査」など)赤ちゃん用防災グッズの必要性~命を守る備えとは~
赤ちゃん特有のリスクがある
多くの家庭では、大人用の防災グッズをそのまま赤ちゃんにも使えると考えがちです。しかし乳幼児には、成長段階に応じた特別なニーズがあります。例えば、ミルクや離乳食の確保が難しくなる可能性があります。災害時にはお湯が使えないこともあり、粉ミルクの調乳が困難になります。また、アレルギーを持つ赤ちゃんの場合、避難先でアレルギー対応の食品が手に入らないリスクもあります。 おむつやおしりふきといった衛生用品も、避難所では不足しやすく、乳幼児の衛生状態を保つためには十分な備蓄が欠かせません。さらに、赤ちゃんは体温調節機能が未熟なため、寒さや暑さの影響を受けやすく、防寒・防暑のための備えも必要です。体調管理の面では、鼻づまりが呼吸困難につながるリスクがあることも見逃せません。 2024年1月に内閣府が公開した「乳幼児の防災対策特集ページ」でも、「赤ちゃんの命を守るには、大人とは別の備えが必要」と明記されています。災害の現場から見えてきた必須アイテム
実際の災害時の経験から見えてきたのが、「液体ミルク」「おむつ・おしりふき」「おんぶひも」「体温管理グッズ」「鼻水吸引器」などのアイテムの重要性です。たとえば、2024年2月に日本小児科医会が発表した論文では、停電時でもそのまま使用できる液体ミルクの備蓄が推奨されています。また、アレルギー対応の食品についても、最低1週間分の備蓄が望ましいとされています。 おむつについては、通常品では長期保存が難しいため、2024年1月には5年間保存可能な防災用紙おむつが提案されています。おしりふきは体を拭く用途としても使えるため、多めに備えておくと役立ちます。 避難時の移動手段としては、ベビーカーが倒壊物や段差で使えないケースが多く、2023年11月に消費者庁が「ベビーカーでの避難は危険」と注意喚起しています。そのため、抱っこひもやおんぶひもを活用した移動が現実的であり、NHKの防災番組でも被災者が「おんぶひもが役立った」と証言しています。 また、体温管理においては、寒さ対策として使い捨てカイロやブランケットを、暑さ対策には保冷剤や冷却シートを用意しておくと安心です。避難所の環境は過酷になりやすいため、こうした対策は命に直結します。 鼻水吸引器も非常に重要です。避難生活中はホコリやカビ、温度変化などで鼻づまりを起こしやすくなり、母乳やミルクが飲めなくなることで栄養不足や脱水の危険が生じます。実際の被災者からは「電動吸引器が停電で使えず困った」という声もあり、電池や充電で動く携帯型や手動式の吸引器を防災バッグに入れておくことが推奨されています。 こうした動きを受けて、各自治体や企業でも新しい取り組みが進められています。2023年10月には東京都が段ボール製の簡易仕切りベッドを試作し、授乳やおむつ替えのためのスペース確保を目指しています。乳幼児向けの防災セットも進化を続けており、長期保存可能なミルクや圧縮おむつ、さらには鼻水吸引器までセットになった商品が登場しています。今すぐ家庭でできる備えとは
「3日分+α」の備蓄
従来の「1週間分」から、「3日分+自治体支援が届くまでの予備」に見直されています。ミルク・おむつ・常備薬は最低3日分を確保しましょう。母子手帳のデジタル保存
母子手帳には予防接種歴や健康情報が記載されています。写真をスマホに保存したり、クラウドにバックアップしておくと安心です。在宅避難の準備
避難所へ行かず自宅で過ごす「在宅避難」を想定し、水・トイレ・食料・懐中電灯などを備えておくことも大切です。健康管理グッズの再確認
体温計、解熱剤(小児用)、保湿剤など、自宅で使用している医療品は、予備を確保しておきましょう。避難所では不足しがちです。 災害は突然やってきます。だからこそ、日頃の備えが赤ちゃんの命を守る鍵となります。一見地味に見える鼻水吸引器ひとつとっても、その有無が命を左右することがあります。ここ半年の専門家の助言や政府の情報を参考に、今日からでもできる準備をはじめましょう。カンガルーケアは本当に効果があるの?
最新の研究やレポートから考察
カンガルーケアって何?
カンガルーケアとは、新生児を母親や父親の胸の上に抱き、直接肌と肌を触れ合わせるスキン・トゥ・スキン・ケアの一種です。もともとは1970年代に南米コロンビアのボゴダという町の病院で保育器不足を補い、低出生体重児の生存率を上げるために開始されましたが、早産児や低出生体重児(2500g未満)のケアとして発展し、現在では正期産(37週以降)の赤ちゃんにも広く実施されています。その名称は、カンガルーが子どもをお腹の袋に入れて育てる姿に由来しています。
最新の研究やデータでまた注目されているカンガルーケア
近年、多くの研究がカンガルーケアの効果を科学的に証明しています。米国小児科学会(AAP)の2023年の報告では、カンガルーケアが赤ちゃんの生理的な安定性に役立つことが実証されています。具体的には、母親や父親の体温により赤ちゃんの体温が自然に調節され、低体温のリスクが減少するほか、赤ちゃんの心拍数や呼吸が安定しやすくなり、無呼吸発作のリスクが低下することが分かっています(米国小児科学会, 2023)。 また、世界保健機関(WHO)の2022年ガイドラインでも、特に低出生体重児や早産児に対し、積極的にカンガルーケアを推奨しています。WHOの報告によると、カンガルーケアはこうした赤ちゃんの成長促進や感染症リスクの低減、さらには生存率向上に対しても有効であることが示されています(WHO, 2022)。 母乳育児の促進効果も多くの研究から裏付けられています。カンガルーケアを実施することで、母乳の分泌が促進され、授乳成功率が大きく向上します。母乳育児は赤ちゃんの免疫力向上や母子双方の健康維持にもつながります。父親の育児参加にも効果!?
心理的な側面でも、カンガルーケアには大きなメリットがあります。2022年に南オーストラリア大学で行われた研究では、早産児を持つ父親が毎日1時間以上カンガルーケアを行った結果、不安や緊張が軽減され、赤ちゃんとの情緒的な絆が深まったと報告されています。 このようにカンガルーケアは、母親だけでなく父親の育児参加や精神的健康にも重要な役割を果たすことが明らかになっています。十分な正しい知識と医療スタッフのサポートが不可欠
一方で、カンガルーケアを安全に行うには十分な注意が必要です。特に低出生体重児や早産児の場合は、医療スタッフの監視下で慎重に行うことが求められます。2024年の日本産科婦人科学会の報告では、カンガルーケア中に赤ちゃんに異常が起きた場合、対応が遅れるリスクがあると指摘しています。そのため、自宅など医療スタッフがいない環境での長時間の実施は推奨されません。 正期産で生まれた赤ちゃんに対しても、カンガルーケアは安全で推奨されていますが、赤ちゃんの健康状態を確認したうえで実施することが大切です。特に低血糖や呼吸器系に問題を抱えている赤ちゃんについては、慎重に医師や助産師と相談しながら進める必要があります。 また、カンガルーケアを行う母親自身の体調や精神状態にも配慮が必要です。カンガルーケアの実施が母親にとって負担となり、かえってストレスを増やす場合もあります。母親が疲労やストレスを感じている場合には、無理に長時間行うことは避け、短時間でも定期的に取り入れる方法を検討しましょう。 結論として、カンガルーケアは正しい知識と医療スタッフのサポートの下で実施すれば、多くの身体的・心理的メリットが得られる素晴らしいケア方法です。赤ちゃんだけでなく親の心身の健康にも良い影響を与えるため、医療機関でのガイドラインに従って積極的に取り入れることをおすすめします。 引用文献:米国小児科学会 (2023). Skin-to-Skin Care Recommendations. WHO (2022). Guidelines on Kangaroo Mother Care. 南オーストラリア大学 (2022). Effects of Kangaroo Care by Fathers on Preterm Infants. 日本産科婦人科学会 (2024). 新生児へのカンガルーケア実施の安全性と課題に関する報告書。赤ちゃんの頭の形、大丈夫?
"斜頭症とSIDS予防の正しい理解を"
斜頭症の原因と生活習慣との関係
赤ちゃんの頭はとても柔らかく、外からの圧力で簡単に形が変わります。 とくに、あおむけで長時間寝ていると、後頭部に圧が集中し、平らになりやすい傾向があります。 他にも、 ・寝ている時間が長い ・同じ向きで寝る ・ベビーカーやバウンサーでの体勢が固定されがち ・胎内の位置や出産時の圧迫による先天的な要因 などが原因として知られています。こうした積み重ねが、頭の形に影響を与えるのです。SIDS予防と絶壁頭 ― どちらも大切だからこそ知っておきたいこと
ここで、乳幼児突然死症候群(SIDS)との関係についても触れておく必要があります。 SIDSとは、健康な赤ちゃんが睡眠中などに突然亡くなってしまう原因不明の病態で、国内外で多くの事例が報告されています。 2023年に日本では48名の乳幼児がSIDSでなくなっていて、1歳未満児の死亡原因の5番目です。 このSIDSを予防するうえで、「あおむけ寝」が強く推奨されています。うつぶせ寝はたんにSIDSのリスクだけではなく、気道がふさがれやすく、窒息リスクが高まります。SIDSはうつぶせ寝、あおむけ寝のどちらの体勢でも起こっていますが、あおむけに寝かせたほうが発症率が低いことが研究でわかっています。 医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせましょう。睡眠中の窒息事故を防ぐ上でも有効です。 また、SIDSは冬期に多いためこども家庭庁は、毎年11月を乳幼児突然死症候群(SIDS)の対策強化月間と定め、SIDSに対する社会的関心を喚起するため、発症率を低くするポイントなどの重点的な普及啓発活動を実施しています。 あおむけ寝を続けることで斜頭症が生じるリスクもあるため、「どちらを優先すべきか」と悩むママも多いのではないでしょうか。 SIDS予防をしながら、頭の形も整えることは可能です。大切なのは、睡眠中はあおむけが基本ですがその中でも授乳毎に正面、右向き、左向きと頭の向きを入れ換えたり、覚醒時の時間帯で一定方向への頭への圧力を軽減する工夫を取り入れることです。おうちでできる工夫 ― 無理なく毎日に取り入れるケア
まず取り入れやすいのが「タミータイム(うつぶせ時間)」です。これは赤ちゃんが起きているときにうつぶせの姿勢で過ごす時間を作るもので、後頭部への負担を和らげるだけでなく、首や背中の筋力も育まれます。 赤ちゃんはいつ眠ってしまってもおかしくないのでご両親のいずれかが必ず赤ちゃんの目を見ながら行う事が重要です。 タミータイムが難しい時は、親が抱っこをして過ごす時間を意識的に増やすことでも、頭部への圧を軽減することができます。 また、ベビーベッドの置き方やおもちゃの配置を工夫し、赤ちゃんが自然と左右のどちらにも首を向けるように促すことも有効です。 このように、日中の工夫と睡眠時の安全性のバランスを意識することで、絶壁頭とSIDSのどちらにも配慮した育児が可能になります。いつ病院に相談したらいいの?
位置的頭蓋変形は多くの場合、重度でなければ成長とともに自然に整っていくものですが、以下のような場合には位置的頭蓋変形が重度であったり頭蓋縫合早期癒合症という手術を必要とする病気の場合があるため医師への相談を検討してください。 ・頭の変形が目立ち、左右非対称が強いと感じるとき ・顔がいつも同じ方向に傾いている ・覚醒時のうつぶせや縦抱きを積極的に行っても生後6カ月を過ぎても改善が見られない ・発達の遅れや寝返りが極端に遅いと感じる ・耳の大きさやかたちに左右差があるなと感じた時 赤ちゃんの頭の形やSIDSのリスクは、ママやパパのちょっとした工夫で大きく変わります。必要以上に心配しすぎる必要はありませんが、赤ちゃんの今を大切にしながら、将来に向けたケアをしていくことが、家族みんなの安心につながります。 そして何より、ママが一人で悩まないことも大切です。気になることがあれば、遠慮せずに医師や地域の保健師に相談してください。 *頭蓋縫合早期癒合症 赤ちゃんや子供の頭蓋骨の縫合(骨のつなぎ目)が通常よりも早く癒合してしまう病気です。脳の成長を阻害するため神経発達の遅れの原因になります。治療は手術が必要になりますが手術の時期により方法は異なります。早期に発見されれば侵襲の少ない内視鏡的治療が可能です。乳児血管腫
概要
血管腫は血管の拡張や増殖によって生じる良性腫瘍です。出生時から大きさが変化しない「血管奇形」と、大きくなっていく「血管腫」があります。血管奇形が自然に消えないのに対して、血管腫は自然に消えることが特徴です。 乳児血管腫は、生後数日~数週間後に少しずつ現れる、盛り上がりのある赤あざです。大きさは数ミリから握りこぶしほどのものまでさまざまで、生後6~12ヶ月でピークに達し、5~10歳で自然に消えるといわれています。現れる箇所もお腹や頭部、目の周りなどさまざまで、部位によっては何らかのトラブルを引き起こします。治療法
乳児血管腫は治療をしなくても自然に消失することが期待できるため、経過観察のみとするケースが多い病気です。しかし、自然に消失した後にしわやたるみが生じて将来的に見た目が気になることがあるため、治療を提案される場合があります。特に、かなり大きなものは、伸びた皮膚が縮みきらずに盛り上がりが残り、見た目に影響が及びます。 乳児血管腫の治療法は、レーザー治療と内服治療です。レーザー治療では、血液中のヘモグロビンがレーザーのエネルギーを吸収して、熱が発生することで血管の内壁が壊れて血管が閉塞し、乳児血管腫の改善へ導きます。生後2~3ヶ月以内に照射すると、ピーク時の大きさを小さく留める効果も期待できます。ただし、深さが1mm以上のものに対する効果は限定的です。 3ヶ月程度の間隔を空けて、5~15回程度の照射を行います。照射時にはゴムで弾かれたような痛みがあるため、痛みを抑える目的で貼り薬や塗り薬のほか、麻酔を行うことがあります。 内服治療では、血管腫の増殖を抑える効果が期待できる薬剤を使用します。ただし、乳児血管腫が健康に害を与えている場合や、急激に大きくなったり痕が残りやすいと判断されたりした場合に限り内服治療を行います。 レーザー治療と内服治療はいずれも保険適用の治療法です。早期治療が必要な場合
乳児血管腫は、発生した部位によっては身体の機能や発達に悪影響を及ぼします。例えば、目の周りに現れると、盛り上がった赤あざによって視野が妨げられることがあります。また、喉にできた場合は気道をふさがれて呼吸困難に陥る可能性も否定できません。そのほか、肛門や尿道の出口にできた場合は、排泄障害につながることがあります。 健康面への害はないものの、頭皮に生じた大きな乳児血管腫は、治療を行わないと髪が生えてこなくなることがあるため、コンプレックスの原因になる可能性を踏まえると、治療した方がよいといえるでしょう。 なお、現在は乳児血管腫が小さくて機能や発達に影響を及ぼしていなかったとしても、将来的にトラブルにつながると判断された場合は、早期治療を行います。乳児血管腫に気づいた段階で診断を受けて、治療方針や治療を受けるタイミングなどについて医師と相談して決めることが大切です。 今回は、乳児血管腫の症状や治療法、早期治療が必要なケースについて解説しました。単なる赤あざではなく、機能や発達に悪影響が及ぶこともあるため、放置せずにまずは医師に相談しましょう。赤ちゃんの健康を守るビタミンDの重要性
"くる病予防のために知っておきたいこと"
ビタミンDと骨の健康の関係要
ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助ける重要な栄養素です。これらのミネラルは骨を強くするために不可欠で、ビタミンDが不足すると、赤ちゃんの骨が正常に成長しなくなります。 くる病の症状としては、肋骨にビーズ状の突起が現れたり、足がO脚やX脚になったり、頭蓋骨が柔らかくなるなどがあります。 くる病には大きく分けて二つのタイプがあります。 一つは「代謝性くる病」で、腎臓や肝臓の病気、あるいは遺伝的要因によって起こります。もう一つは「栄養性くる病」で、ビタミンDやカルシウムの摂取不足が原因です。 特に注意が必要なのは、この「栄養性くる病」に分類される母乳育児中の赤ちゃんに起こりやすいビタミンD欠乏性くる病です。0~5カ月児の52%がビタビンD欠乏!?
日本小児医療保健協議会(四者協)は、3月24日、「乳児期のビタミンD欠乏の予防に関する提言」を発表しました。 発表の背景として、ビタミンD欠乏乳児の増加を指摘し、0~5カ月児の52%がビタミンD欠乏だったという報告があります。 (日本小児科学会雑誌 2018; 122: 1563-1571、J Nutr Sci Vitaminol 2018; 64: 99-105) ビタミンDは食事からの摂取と日光による生成とともによって供給されます。このため提言では、小児科医が行うべき啓発・教育活動として、以下の6項目を提示しました。 1. 胎児のビタミンD充足度は母体の充足度と比例する。妊婦だけでなく、将来を見据えて小児期・青年期からビタミンDを充足させるような生活・食事習慣を確立する 2. 母乳のビタミンD含有量は少ないが、ビタミンD充足目的で母乳栄養が妨げられることがないようにする 3. 適度の外気浴、外遊びを行い、紫外線防止のため過度に日焼け止めを使用しない 4. 補完食(離乳食)の開始を遅らせず、適切な時期に開始する 5. ビタミンDだけでなく、カルシウム(Ca)も適正に摂取する 6. ビタミンDの欠乏要因となる生活・食事習慣の改善が困難な場合は、乳児用の天然型ビタミンDサプリメントの摂取を考慮する。過剰摂取リスクを回避するためにも、説明文書の用法・用量に従い、医師の指導の下に摂取することが望まれる赤ちゃんがビタミンD不足になりやすい理由
新生児や乳児は特にビタミンD不足になりやすい環境にあります。まず、赤ちゃんの肌はとてもデリケートなため、紫外線から守る必要があり、結果的に日光浴によるビタミンD生成が制限されてしまいます。また、排他的な母乳育児を行っている場合、食事からビタミンDを十分に補給することができません。 実際、日本での別の調査によると、3歳未満の子どもにおけるビタミンD欠乏の発生率は10万人当たり5.4人と、他の年齢層に比べて高くなっています。2005年から2014年にかけての調査ではくる病と診断される症例も増加傾向にあり、これは生活スタイルの変化と関係があると考えられます。ビタミンD不足を防ぐための対策
では、ビタミンD不足はどうしたら防げるのでしょうか? まず、赤ちゃんに直接ビタミンDサプリメントを与える方法です。液体タイプのサプリメントが一般的で、生後数日から始めることが推奨されています。次に、母親がビタミンDサプリメントを摂取することで、母乳中のビタミンD濃度を少し上げる方法もあります。 ただし、この方法だけでは赤ちゃんの必要量を完全に満たすことは難しいため、直接補給と組み合わせることが望ましいでしょう。 また、適度な日光浴も有効です。ただし、赤ちゃんの肌は非常に敏感なので、直射日光を避け、朝や夕方の柔らかい日光を短時間浴びる程度に留めることが大切です。日焼け止めを使用する場合は、ビタミンD生成に必要な紫外線も遮断してしまう可能性があるため、医師と相談しながら適切な方法を見つける必要があります。ビタミンDの過剰摂取に注意
ビタミンDは不足しても問題ですが、摂りすぎにも注意が必要です。ビタミンDは確かに骨の健康を促進し、カルシウムの吸収を助ける役割を果たしますが、過剰に摂取すると体内のカルシウムレベルが異常に高くなり、骨からカルシウムが過剰に流出することがあります。これにより、本来くる病を予防するはずのビタミンDが、骨の脆弱化という、くる病に似た症状を引き起こす可能性があるのです。 また、過剰摂取すると、血中のカルシウム濃度が高くなりすぎ(高カルシウム血症)、吐き気や嘔吐、腎臓の機能障害などを引き起こす可能性があります。赤ちゃんの健康な成長のために
くる病は予防可能な病気です。母乳育児は赤ちゃんにとって多くの利点がありますが、ビタミンDは特別な配慮が必要です。WHOの推奨を参考にしながら、赤ちゃんの成長段階に合わせた適切なビタミンD補給を心がけましょう。 大切なのは、極端に走らず、バランスを考えることです。日光浴を完全に避けるのではなく適度に行い、サプリメントも必要に応じて適量を使用する。このような総合的なアプローチが、赤ちゃんの健やかな骨の成長を支えます。 赤ちゃんの健康は、毎日の小さな積み重ねで守られています。ビタミンDについて正しい知識を持ち、かかりつけの小児科医と相談しながら、わが子に合った方法を見つけてください。健やかな成長を願って、今日からできることから始めてみましょう。 ※日本小児医療保健協議会(日本小児科学会、日本小児保健協会、日本小児期外科系関連学会協議会、日本小児科医会で構成)放置すると危険な赤ちゃんの「鉄欠乏性貧血」
赤ちゃんが最近、活気がなくいつも眠そうだったり、遊びたがらない、顔色が悪い、疲れやすいなど気になることはありませんか?そんな時には鉄欠乏性貧血症が疑われます。 赤ちゃんと「貧血」という言葉がなかなか結び付かない方もいるかもしれませんが、意外に知られていないことなので解説してみます。
赤ちゃんの貧血について
赤ちゃんの貧血も、基本的には大人の貧血と同じです。血液中の赤血球が不足し、体内に酸素を十分に運べなくなる状態を指します。ただ、赤ちゃんの成長や発達に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と適切な対応が大切です。鉄欠乏性貧血とは?
赤ちゃんの貧血の中で最も多いのが「鉄欠乏性貧血」です。赤血球を作る材料となる鉄分が不足することで、酸素を運ぶ赤血球の数が減少してしまいます。出生時には赤ちゃんの体に胎児期から蓄えられていた鉄が十分にありますが、生後4~6カ月頃には使い果たしてしまいます。その後、母乳やミルク、離乳食から十分な鉄分を摂取しないと貧血が進行する可能性があります。 この貧血は、生後6カ月から1歳頃の急速な成長期に特に起こりやすく、離乳食の内容や鉄分の摂取量が不足することが主な原因となります。 また、早産児や低出生体重児は生まれつき体内の鉄の蓄えが少ないため、鉄欠乏性貧血になりやすい傾向があります。さらに、妊娠中にお母さんが鉄分不足だった場合、赤ちゃんにもその影響が及ぶ可能性があります。これらの要因が重なることで、赤ちゃんの体内に必要な鉄分が不足し、貧血の症状が現れるのです。鉄欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血の症状は、軽度では分かりにくい場合もありますが、注意深く観察することでいくつかの兆候に気づくことができます。 赤ちゃんの顔色が青白く見えたり、元気がなく動きが少なくなることが一般的な症状です。周りの子と比べて、顕著に色白だなと思う時は、一度かかりつけのお医者さんに相談してみましょう。 ただ、鉄欠乏性貧血の場合は、徐々に貧血が進行し、症状として顔の血の気が少ないというくらいの症状しか出ないことも多いのです。かかりつけの先生と予防接種や健康診断の時などによくコミュニケーションをとりながら、お子さんの健康を守っていきましょう。他にもある赤ちゃんの貧血
赤ちゃんに起こる貧血は鉄欠乏性貧血だけではありません。以下のような種類の貧血も考えられます。1.溶血性貧血
赤血球が通常より早く破壊されることによって起こる貧血です。新生児溶血性疾患(母体と赤ちゃんの血液型の不一致)や、赤血球の形に異常がある遺伝性疾患が原因となることがあります。この場合、鉄欠乏性貧血と同じような兆候に加え、出生後早期から黄疸が強くみられます。血液型不一致の場合の黄疸は新生児時期のみで解決しますが、遺伝性疾患は長引く黄疸が特徴です。2.未熟児貧血
早産や低出生体重児では、赤血球の生成能力が未熟であることや、体内の鉄分の蓄えが少ないことを背景に急激に身体が成長するため赤血球の産生が追い付かなくなり、貧血が起こりやすい傾向があります。 これらの貧血はそれぞれ異なる原因によって引き起こされますが、いずれも早期発見と適切な治療が重要です。貧血の重症化によるリスク
貧血が重症化すると、赤ちゃんの成長や健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。貧血が重度に進むと、身体に十分酸素を運べるように心臓が普通よりたくさん働かなくてはならず、心臓に負担がかかり、そのうち心臓が疲れて心不全となることがあります。貧血の予防と対処法
赤ちゃんの貧血を予防するためには、適切な栄養の摂取が重要です。特に離乳食が始まる時期には、鉄分を多く含む食品を意識的に取り入れることが大切です。例えば、レバー、赤身の魚、ほうれん草、大豆製品(豆腐や納豆)などを離乳食に加えましょう。また、鉄の吸収を助けるビタミンCを含む野菜や果物を一緒に摂取することで、より効果的に鉄分を補えます。 母乳のみで育てている場合には、鉄分を含む離乳食を意識的に取り入れることも有効です。また、早産児や低出生体重児などリスクが高い赤ちゃんについては、小児科医の診察を受けることで、適切なサポートが受けられます。 貧血が疑われる場合には、医師に相談し、必要に応じて血液検査を行いましょう。場合によっては鉄剤の処方や栄養指導が行われます。 鉄分を強化した離乳期用のミルクも販売されているので、それを利用するのも一つの方法です。お母さんへのメッセージ
赤ちゃんの貧血は、適切な対応を行えば改善が期待できる病気です。普段の生活で赤ちゃんの様子をよく観察し、元気がない、顔色が悪い、食欲が落ちているなどの兆候に気づいたら、早めに小児科医に相談してください。赤ちゃんが健やかに成長するためには、毎日の食事や栄養に気を配ることが大切です。小児の神経疾患における突然死の原因解明の現状
突然死を招く小児神経疾患
小児の突然死に関係すると思われる神経疾患は、多岐にわたります。ちなみに神経疾患とは、脳や脊髄、神経などがいくつかの原因で障害される病気で、体の多くの機能を制御しているため、その症状はさまざまです。その中でも特に小児の突然死との関係性や類似性が推察されるものを上げています。てんかんおよびてんかん関連突然死
てんかんは、脳の神経細胞の過剰な興奮によって引き起こされる発作を繰り返す疾患です。SUDEPは、てんかん患者が発作に関連して予期せず突然死する現象で、そのメカニズムは完全には解明されていませんが、てんかんの発作に伴う呼吸循環障害が関与していると考えられています。チャネルパチー(チャネル異常症)
イオンチャネルは、細胞の膜に存在する特殊なタンパク質で、ナトリウムやカリウム、カルシウムなどのイオン(電気を帯びた粒子)が出入りするための通り道です。このイオンの流れによって、細胞は電気信号を伝えたり、働きを調節したりします。 特に、神経や心臓の細胞にとって、イオンチャネルはとても重要です。たとえば、脳の神経細胞は電気信号を使って情報をやりとりしていますが、その電気信号の発生と伝達にはイオンチャネルが欠かせません。 チャネルパチーはこのイオンチャネルの遺伝子変異によって引き起こされる疾患群です。例えばSCN1Aという遺伝子に変異があると乳児期に発症する重症のてんかんの一つである「ドラベ症候群」を発症する可能性があります。中枢神経系の構造的異常
先天的に脳の発達異常や構造的異常、脳奇形なども、突然死の原因となることがあります。心肺中枢の機能異常
延髄や脳幹の機能異常は、呼吸や循環の調節に重要な役割を果たしており、これらの領域の異常は、SIDSの原因となる場合があります。代謝性疾患と神経症状
細胞の中にあるミトコンドリアという小さな器官の働きがうまくいかなくなることで起こるミトコンドリア病や脂肪酸代謝異常症などの代謝性疾患も、神経の機能異常を伴い、突然死を引き起こすことがあります。感染性脳症や髄膜炎
急性脳症や髄膜炎などの感染性疾患も、重篤な場合には突然死に至ることがあります。神経筋疾患
デュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの神経筋疾患も、呼吸不全などを引き起こし、突然死の原因となることがあります。 以上のような神経疾患の原因や発症のプロセスなどが次第に解明されてきています。それには近年の研究技術の進歩が大きく関係しています。研究はマクロからミクロ、DNAからRNAへ
従来の解剖学的な研究に加え、分子遺伝学的レベルの解析が進んでいます。私たちの体のすべての細胞には、DNA(デオキシリボ核酸)という遺伝情報が含まれており、これが設計図となってタンパク質を作り、体の機能を調整しています。 しかし、遺伝子に異常(突然変異など)があると、正常なタンパク質が作れなくなり、病気の原因になることがあります。 こうした遺伝子の異常を細かく調べることで、病気のメカニズムを解明し、診断や治療のための情報を得ることができる可能性があります。さらには遺伝情報を持つDNAだけでなく、遺伝情報を伝えたり、タンパク質を作るために必要な(リボ核酸)の研究も盛んに行われています。特に、2024年のノーベル賞でも話題となったマイクロRNAと呼ばれる小さなRNA分子の働きに関する詳細な動きが解明されつつあり、てんかんなどの神経疾患や突然死との関連が示唆されています。 こうした研究の進展は、将来の治療や予防に大きな可能性をもたらしています。 遺伝子解析の結果に基づいて、個々の患者さんに最適な治療法を選択する個別化医療が期待されています。 また、病態の解明が進むことで、遺伝子治療や再生医療などの革新的な技術によって、難治性の神経疾患の治療や新たな治療法の開発も期待できます。 さらにはリスクの高い患者さんを早期に発見し、適切な予防策を講じることで、突然死のリスクを減らすことができる可能性があります。脳バンクによる取り組み
とはいえ、小児の突然死に関する研究を進める上で、亡くなったお子さんの脳を含む関連臓器の提供は非常に重要です。これらの貴重な検体は、病態の解明や新たな治療法の開発に役立てられます。日本でも、脳バンクなどの取り組みが進められており、アルツハイマー病やパーキンソン病、自閉症、統合失調症、てんかんなどの研究に活用されています。 小児の突然死という深刻な問題に立ち向かうためには、研究者だけでなく、医療関係者、患者さん、ご家族など、社会全体での協力が不可欠です。All Japanでの研究プロジェクトを推進し、知識や情報を共有することで、より効果的な対策を講じることができます。 乳幼児突然死症候群(SIDS)は、多くの謎に包まれた現象ですが、研究の進展とともに、その原因やメカニズムが徐々に明らかになりつつあります。赤ちゃんはどんなストレスを感じてる?
赤ちゃんはこんな時にストレスを感じている
まずは赤ちゃんがどんな時にストレスを感じているかをまとめてみました。 日常的に納得できるものから意外に気が付かないものまでたくさんあります。生理的な不快感
お腹が空いている:赤ちゃんにとって、空腹は非常に強いストレス源です。 眠いのに眠れない:環境が騒がしい、明るい、体が不快など、睡眠が妨げられることもストレスになります。 おむつが汚れている:湿ったり汚れたりしている状態は不快感を引き起こします。環境の変化
温度や湿度:寒すぎたり暑すぎたりする環境は赤ちゃんにとってストレスです。 騒音や過剰な刺激:大きな音、強い光、急激な動きなどは赤ちゃんを驚かせ、不安感を与えます。 新しい場所や人:見知らぬ環境や人々と接するとき、赤ちゃんは不安や緊張を感じることがあります。人間関係のストレス
親や養育者との分離:お母さんや主要な養育者と離れるとき、赤ちゃんは強いストレスを感じます。 一貫性のない対応:例えば、あるときは泣いてもすぐに抱っこされ、別のときは無視されるなど、対応が一定でないとストレスを感じます。身体的な痛みや不快感
体調不良:風邪やお腹の張り、歯が生えるときの痛み(歯ぐずり)などはストレスの一因です。 抱っこや姿勢:不自然な姿勢や抱っこされるときの圧迫感も不快感を与える場合があります。感情的なストレス
親のストレスを感じ取る:赤ちゃんは親や周囲の人の感情に非常に敏感で、親がストレスを抱えていると、それを感じ取って不安になることがあります。 自己表現ができない:自分の要求や感情を言葉で伝えられないこと自体が、赤ちゃんにとってストレスです。どんなことを意識して赤ちゃんの環境を整えてあげればいいか
発達の初期にあたる赤ちゃんのストレスに対する対処のレパートリーはごく限られています。なかなかはっきりしたストレスのサインを出すことができない場合が少なくありません。そのためにはなるべく赤ちゃんがストレスを感じないような環境や関係を作っていくことが大切です。スキンシップを強化する
赤ちゃんは親の体温や心音を感じることで安心します。特に不安を感じているときは、しっかり抱きしめるだけで気持ちが落ち着きます。抱っこやおんぶをしてみてください。また、手足を優しくさすったり、腹部を時計回りに撫でるなどベビーマッサージもリラックスさせる効果があります。音や明るさ、温度や湿度を調整、五感の刺激を大切に
赤ちゃんは騒がしい環境では眠りにくく、不安を感じやすくなります。部屋の音量を落とし、クラシック音楽や必要に応じて白いノイズ(ホワイトノイズ)を使うと良いでしょう。気持ちを落ち着かせる効果があります。最近はホワイトノイズのスマホアプリなどもあります。 また、夜は照明を暗くし、昼間は適度な明るさを保つことで、昼夜のリズムが整いやすくなります。さらに部屋を快適な室温(20~24℃)と湿度(40~60%)を保つことで、赤ちゃんの快眠を促します。触覚も大切です。赤ちゃんにいろいろな素材を触わらせることで好奇心が働き感覚が刺激され、脳の発達が促されます。ただし興味を示さなかったり嫌がるときには無理に押し付けないでください。規則的な生活リズムを作ってあげる
規則的な生活パターンは赤ちゃんの安心感につながります。毎日同じ時間にお風呂に入れたり、寝る前に同じ音楽や絵本の読み聞かせを行うことで、赤ちゃんは「もうすぐ寝る時間だ」と理解するようになります。日中は積極的に体を動かす時間を設けてあげると、夜にぐっすり眠ることができます。安定した授乳と食事時間を作る
お腹が空いていると赤ちゃんは機嫌が悪くなります。母乳やミルクのタイミングや授乳間隔を一定にすることで、赤ちゃんの不安が減ります。離乳食が始まったら、明るい雰囲気の中で食事を与えると、赤ちゃんもリラックスして食べられます。何より食事を楽しむことのできる環境づくりを考えましょう。不安を和らげる工夫
赤ちゃんにはいくつかのお気に入りのおもちゃやアイテムがあるはずです。おしゃぶりやお気に入りのタオル、ぬいぐるみなどの「安心アイテム」をいつも周りにそろえてあげると安心につながります。外出時に持っていける「安心アイテム」があれば、お出かけの不安が減り、より気分転換がうまくいくはずです。赤ちゃんのリラックスはお母さんや家族のリラックスから
最後に赤ちゃんにとっても大きなストレスとなりうるご両親や家族との関係性の中で生じるストレスについて少し考えてみたいと思います。特にお母さんとの間で起こる様々な感情や関係性の振幅は、時として赤ちゃんにとって大きなストレスになります。 例えばいつもにこやかに自分を見ているお母さんがあるとき無表情な顔で見ただけでも赤ちゃんにとってはストレスになってしまいます。お母さんが赤ちゃんの顔を見るとき、笑い返したり声をかけたりするのが普通です。当然赤ちゃんはお母さんのそうした態度を期待しています。ところがお母さんが無表情な顔で自分を見た時に、自分の期待を裏切られ拒否されたと感じてしまいます。さらにはお母さん自体のストレスの程度まで敏感に察知します。 赤ちゃんのメンタルヘルスは、お母さんのメンタルヘルス、お父さんのメンタルヘルスと非常に密接に関係して連動しており、家族のメンタルヘルスの中心にはお母さんがいると場合が多いと報告されています。 「Parent and Child Stress and Symptoms: An Integrative Analysis」(1989「Developmental Psychology」) 育児は体力的にも精神的にも負担が大きいものです。母親が自分自身のメンタルケアに取り組むことで、育児の疲労感や不安が軽減され、より穏やかな気持ちで赤ちゃんと向き合えます。母親のメンタルケアを具体的に実践するためには、いくつかの方法があります。 まず、お父さんや家族、友人、専門家など、信頼できる人にサポートを求めることが大切です。周囲の協力を得ることで、育児の負担を軽減し、精神的な余裕を持つことができます。また、十分な睡眠やリラックスの時間を確保し、適度に休息を取ることも重要です。心身を休めることで、育児に対するエネルギーを保つことができます。 さらに、育児コミュニティに参加し、同じ境遇の人々と情報や気持ちを共有することは、孤独感を軽減し、共感や安心感を得る助けとなります。 最後に、必要に応じてカウンセリングや医療機関などの専門家の支援を受けることも検討しましょう。専門家に相談することで、適切なアドバイスやサポートを受けることができ、より良い解決策が見つかるかもしれません。 これらの方法を取り入れることで、お母さん自身の心の健康を保ち、赤ちゃんにとっても安心できる環境を整えることができます。赤ちゃんのストレス軽減は、家庭全体の安定にもつながる大切なテーマです。赤ちゃんの健康を支えている食物繊維とは?







