離乳期の栄養について
離乳期から幼児期にかけては、食習慣、嗜好、身体の基礎を作るとても重要な時期で、生活習慣病にもつながりひいては将来の病気にも影響します。乳汁だけで栄養を取っていた乳児期から離乳食、幼児食を経て、大人の食生活のベースが築かれていきますし、身体も骨や筋肉、内臓、脳など重要な器官が成長していく時期で十分な栄養が必要となります。正しい知識で栄養と健康管理を行い、健やかな成長を促進させましょう。
乳児期の栄養について
乳児にとっての唯一の栄養源は母乳もしくはミルクとなります。特に母乳は、乳児とって完全栄養食品で多くの面で優れています。
○ 必要な栄養成分がすべて含まれている
○ 消化吸収が良く代謝負担が少ない
○ 乳児の免疫機能が高まる
○ 細菌を含まず衛生的でアレルギーの心配がない。また、母親にとっても以下のメリットがあります
○ 子宮の収縮を促進して母体の回復を早める
○ 母子関係に良い影響を与える
○ 経済的で簡便
尚、ミルクも近年は母乳に近く改良されており、栄養面で母乳と同等の成分が含まれ身体的な成長に関して劣ることはなくなってきています。
しかし、生後5~6ヶ月頃になると、乳汁だけではエネルギーやタンパク質、ビタミンやミネラルが不足するようになってくるため、乳汁以外の食物から栄養素を摂取することが必要になります。そのため離乳し、離乳食~幼児食を経て味覚を育て、咀嚼を学び、大人と同様の食事ができるようにしていきます。
尚、この時期は、離乳するだけではなく、肉体面でも知能面でも飛躍的に発達・成長する時期でもあり、必要な栄養素を与えて促進するだけでなく、味覚を養って健康的な食生活の礎を築く必要があります。
ですので、必要な栄養素の量、そして食品としてどのくらいを目安に摂取したら良いかについて紹介したいと思います。
● 離乳期の食事量の目安
1回あたりの目安量
生後5~6か月
生後7~8か月
生後9~11か月
1歳~1歳半
穀類
つぶしがゆから始め、すりつぶした野菜なども試してみる。慣れてきたら、つぶした豆腐や白身魚などを試してみる。
全がゆ
50~80
全がゆ90
~軟飯80
軟飯90
~ご飯80
野菜・果物
20~30
30~40
40~50
魚
10~15
15
15~20
または肉
10~15
15
15~20
または豆腐
30~40
45
50~55
または卵
卵黄1~全卵1/3
全卵1/2
全卵1/2~全卵2/3
または乳製品
50~70
80
100
成長と発達のチェック方法
以下の指数およびグラフなどで判断します。
①カウプ指数
赤ちゃんの栄養状態や体格(身長と体重のバランス/肥満かやせているかなど)の判断の参考にする指数。
[ 計算式 ] 体重(g)÷(身長(cm)の2乗)×10
月齢によって基準となる指数が変わるため、注意が必要となる。
◾️ 乳児(3か月〜)
カウプ指数
判定
14.5未満
やせすぎ
14.5 ~ 16未満
やせぎみ
16 ~ 18未満
普通
8 ~ 20未満
太りぎみ
20以上
太りすぎ
◾️ 満1歳
カウプ指数
判定
14.5未満
やせすぎ
14.5 ~ 15.5未満
やせぎみ
15.5 ~ 17.5未満
普通
17.5 ~ 19.5未満
太りぎみ
19.5以上
太りすぎ
◾️ 満1歳6か月
カウプ指数
判定
14未満
やせすぎ
14 ~ 15未満
やせぎみ
15 ~ 17未満
普通
17 ~ 19未満
太りぎみ
19以上
太りすぎ
◾️ 満2歳
カウプ指数
判定
13.5未満
やせすぎ
13.5 ~ 15未満
やせぎみ
15 ~ 17未満
普通
17 ~ 18.5未満
太りぎみ
18.5以上
太りすぎ
②身体発育曲線
成長曲線のグラフに体重や身長を記入して、成長曲線のカーブに沿っているかどうかを確認する
● 身長
● 体重
与えてはいけない食品一覧
<食材一覧と離乳期>
● はちみつ
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
はちみつにはボツリヌス菌が含まれている場合があります。消化器官が未熟な赤ちゃんは腸からボツリヌス菌を吸収してしまい、食中毒を起こす恐れがあります。満1歳までは与えないようにしましょう。
● 青魚
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
サバ、サンマなどの青魚は、EPAやDHAなどの脂肪酸が豊富に含まれている優良食品ですが、傷みやすい食材です。完了食以降から新鮮なものを十分に加熱して食べさせましょう。
● マグロ(赤身)
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
△
○
○
○
マグロの赤身は、よく加熱すれば中期からOKですが、パサパサとした食感で食べづらいため、歯ぐきで噛めるようになってから与えるように。脂分が多い中トロや大トロは離乳食期は避けてください。
また、刺身は消化が悪く、食中毒の心配もあるため、離乳食期は与えないようにしてください。
● お刺身(生魚)
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
○
生魚は消化が悪いため、離乳食を完全に卒業してからにします。また、細菌感染による食中毒の心配があるので、新鮮なものを与えるように気を付けてください。加熱した白身魚は離乳食初期からOK。
● 貝類
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
貝類は消化が悪いため1才以降に。カキはやわらかいため、よく火を通せば後期から可能です。
あさりやはまぐりなどの二枚貝はノロウィルスによる食中毒の心配があるため、新鮮なものを選び充分に加熱してから食べさせます。
● 肉類
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
○
○
○
○
豚と牛は、脂肪分の少ないひき肉を選べば中期からOK。完了期以降はバラ肉などを食べやすい大きさにちぎって与えます。また、鶏のささみはよくすりつぶせば初期の後半から食べられますが、鶏のモモ肉は脂肪分が多いので皮を取り除いてすりつぶしたものであれば中期から可能です。ただし、卵アレルギーがある場合は、鶏肉を与えるのは遅めにしましょう。
肉類はO-157やサルモネラ菌などの心配があるので、子どもには生や半生の状態では絶対に与えないで下さい。
● エビ・カニ・イカ
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
○
消化が悪くアレルギーを起こしやすい食品なので、よく加熱して幼児食期以降に与えます。
エビにアレルギーのある子は、サクラエビにも注意が必要です。イカは完全に奥歯が生えて、しっかり咀嚼(そしゃく)できるようになってから与えましょう。
● 牛乳
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
○
○
○
○
初期は、牛乳を与えるのではなく、粉ミルクをといてミルクがゆやミルク煮に。アレルギーがないのを確認してから、中期以降に加熱して離乳食に使います。牛乳は温めると消化がよくなるため、牛乳だけで飲ませる時は必ず加熱するようにしてください。発酵によって成分が変わっているチーズは中期以降、ヨーグルトは中期後半からOK。
● 全卵
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
△
○
○
○
アレルギーの心配がなければ、よく加熱した卵黄を中期後半からスタートします。全卵を与えるのは、9ヵ月以降に。
● そば
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
アレルギーの心配がないのを確認して、1歳を過ぎてからよくゆでたものを与えます。
● 大豆
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
大豆は消化が悪く、そのままの大きさで食べさせると誤嚥の危険があります。
後期からよく煮たものをすりつぶして与えるようにします。豆腐は火を通して初期から、納豆はゆでこぼしてつぶし、6ヵ月以降から可能です。
● ピーナッツ
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
△
△
1歳を過ぎてから、よくつぶしてピーナッツあえなどに使います。そのまま与えると誤飲の危険があるため、粒のまま食べさせるのは3歳過ぎにします。
ピーナッツのアレルギーもあるので、様子を見ながら少しずつ食べさせましょう。
● ごま
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
栄養価は高い反面、消化が悪いので、後期食以降にすりつぶしてごまあえなどに使います。アレルギー体質の子は、ごまにも反応する恐れがあるので、様子を見ながら食べさせてください。
また、ごまアレルギーがある場合は、いちごやキウイの粒にもアレルギー反応を示すことがあるため注意します。
● 山いも
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
△
△
アクが強く、生のまま食べると大人でも口のまわりが赤くなることもあります。子どもには刺激が強いので、後期食から火を通して食べさせます。
ごはんにとろろをかけると、かまないで飲み込んでしまい、消化が悪くなることがあります。「よく噛んで飲み込もうね」と教えてあげて。
● もち
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
そしゃく力の発達を見て、よくかみつぶせるようになったら、1歳半過ぎを目安に与えます。のどに詰まりやすいので、細かく切り、与えている間は絶対に子どもから目を離さないようにします。
● ハム・ソーセージ
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
△
○
添加物と塩分が多いため、幼児期以降に。 無添加や手作りなら完了期から可能。
● かまぼこ・ちくわ・はんぺん
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
保存料などの食品添加物や塩分が多いため、出来る限り控えましょう。与える場合は、幼児期以降に。はんぺんはつなぎに卵白が使われているので、卵白アレルギーの子どもは要注意です。
● コンニャクゼリー
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
コンニャクゼリーは のどを詰まらせるキケンがあるので、3歳以降に細かく切ってからあげましょう。普通のゼリーなら1歳以降につぶして。
● ケーキ
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
○
市販のケーキは糖分も油分も多いので、幼児期以降に。ママが手作りしたケーキは、離乳食後期からOK。
● チョコレート
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
高カロリーで甘く、虫歯の原因になります。 幼児期に与える必要はありません。
● アイスクリーム
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
糖分が多く、おなかが冷えるため3歳以降に与えます。
● スナック菓子
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
油分、塩分、糖質が多く含まれているため、小さいうちから食べさせないようにします。幼児期のおやつとしても不適切で。
基本的に、嗜好食品を食べさせるのは遅めにしましょう。
● ファーストフード
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
油分、塩分が多いので、大人も子どももなるべく食べないようにしたい。
食べさせるとしたら、幼稚園以降がいいでしょう。
● 水道水
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
△
△
水道水は安全と言われていますが、消毒液なども含まれているので、離乳期は一度沸かしたものを冷まして飲ませます。これを白湯(さゆ)といいます。離乳食に使う場合も、必ず煮沸して。また、普通のミネラルウォーターは鉄分などが多く含まれていて消化に悪いため、赤ちゃん用のものを選んでください。
● コーヒー・紅茶・緑茶
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
カフェインが多く含まれるので、離乳期はNG。3歳以降、家で、牛乳入りのミルクティー(レモンティー)をお楽しみ程ならに飲むくらいならOK。家で淹れた紅茶なら、砂糖の量も把握できます。
● ジュース・炭酸飲料
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
△
糖分が多く含まれることと、炭酸飲料の刺激も赤ちゃんには強すぎるので、飲ませる必要はありません。
ジュースは、幼稚園(3歳以降)に入る頃から外食でOK。イオン飲料は、熱があるときなどの水分補給に便利ですが。
白湯(一度沸騰させた水をさましたもの)の代わりとして日常的に飲ませないようにします。
● ケチャップ
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
後期食以降に、調味料として少量使う程度に。 フライドポテトなどにたくさんつけて食べるのは避けましょう。
● マヨネーズ
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
○
○
完全に火を通しマヨネーズ焼きなどにしたメニューであれば完了食から。マヨネーズには、生のたまごが使われているため、アレルギーの心配のある子は少しずつあたえ、様子を見ながら増やしましす。
● 香辛料
5,6ヶ月
7,8ヶ月
9~11ヶ月
1~1歳半
1歳半~
×
×
×
×
×
香辛料の強い刺激は、素材の味や香りを打ち消してしまうため、幼児のうちは使わないようにします。 カレー粉は、味付け程度に。
離乳とは
離乳とは、赤ちゃんが母乳やミルク以外のものを口に入れられるようになり、幼児期の食事に移行する発達のプロセスです。それまで母乳やミルクなどの乳汁を吸うだけだった状態から、徐々に噛みつぶして飲みこむことができるようになります。食べる食品の量や種類が多くなり、より多くの栄養を補給して体の成長の糧となる重要な時期で、メニューや調理方法などの工夫が必要となります。
離乳の進め方については、一番重要なのは無理なく進めることで、乳児の食欲、発達などを十分に考慮することが大事です。また、将来の生活主観病の予防のためにも、健康的な食習慣を培うことも必要です。また、この離乳の時期や離乳食の与え方について、不安に思うお母さん方が多いため、離乳の基礎知識(離乳の時期や方法)や、離乳食時に与えたい栄養分についてご紹介します。
離乳の開始時期
時期:
生後5~6ヶ月頃
発達段階:
首がすわってくる
支えると座れる
食べ物に興味を持つ
スプーンなどを口に入れても舌で押し出さなくなる(哺乳反射が減少する)
注意事項:
離乳前に果汁などを与えない(※1)
スプーンの使用は離乳後で良い(※2)
※1:離乳前の乳児にとって一番の栄養源は乳汁(母乳もしくはミルク)で、離乳の開始前に果汁などを与えることで乳汁の摂取が少なくなり、タンパク質、脂質、ビタミン類やミネラルが不足する可能性があるため。
※2:哺乳反射が減少する前にスプーンなどを使用すると、舌で押し戻すなどして上手に与えることができない。
離乳食の進め方
ゴックン期(5~6ヶ月頃)
口を閉じてごっくんと飲み込む練習をする。味や食感に慣れる。
回数
1日1回
授乳
赤ちゃんが飲みたいだけ
おかゆ
10倍かゆ
かたさ
なめらかですりつぶされた状態
味付け
しない(だし程度はOK)
食材
炭水化物
米、麺類(うどん、そうめん)、食パン、いも類(じゃがいも、さつまいも)
ビタミン・ミネラル
根菜類(にんじん、大根、かぶ、たまねぎ)
葉物(ほうれん草、小松菜、キャベツ、白菜、レタス)
野菜(かぼちゃ、トマト、ブロッコリー、とうもろこし)
果物(りんご、みかん、いちご、桃、メロン、すいか、バナナ)
タンパク質
豆腐、しらす、じゃこ、白身魚(ひらめ、かれい)
調味料
だし
[ ポイント ]
栄養は母乳とミルクから摂取できているので食材の種類や量は気にしなくて良い。
スプーンや食事の雰囲気に慣れることを重視。
いやがる時は無理に与えない。
食材はアレルギーの少ないものから少しずつ増やす
モグモグ期(7~8ヶ月頃)
もぐもぐと口を動かして、食べ物をつぶして飲み込む練習をする。
回数
1日2回(母乳・ミルクの前に与える)
授乳
赤ちゃんが欲しがる時(1日5~6回が目安)
おかゆ
7倍かゆ
かたさ
舌でつぶせるかたさ(豆腐くらい)
味付け
ごく薄味(だしなどで風味づけ程度)
食材
炭水化物
米、麺類(うどん、そうめん)、食パン、いも類(じゃがいも、さつまいも、里芋)
ビタミン・ミネラル
根菜類(にんじん、大根、かぶ、たまねぎ)
葉物(ほうれん草、小松菜、キャベツ、白菜、レタス)
野菜(かぼちゃ、トマト、ブロッコリー、とうもろこし、アスパラガス、えんどう豆、なす、きゅうり、青のり)
果物(りんご、みかん、いちご、桃、メロン、すいか、バナナ、なし)
タンパク質
豆腐、しらす、じゃこ、白身魚(ひらめ、かれい、たら、鯛、鮭、めかじき、ツナ)鶏ささみ、納豆、粉チーズ、卵黄(卵白は8ヶ月以降)、きなこ
調味料
だし、塩、しょうゆ、みそ
[ ポイント ]
離乳食から30~40%程度栄養を摂取する時期となるため栄養のバランスを考えて与える。
好き嫌いや急に食べなくなることがあるが焦らず無理せず与える。
味を濃くすると食欲が増すことがありますが、味覚が育ちにくくなるためできるだけ食材の味を生かして調理する。
カミカミ期(9~11ヶ月頃)
歯茎で食べ物をかむ練習をする時期。3回食になり食事のリズムもできてきます。
回数
1日3回(母乳・ミルクの前に与える)
授乳
赤ちゃんが欲しがる時(1日5~6回が目安)
おかゆ
5倍かゆ
かたさ
歯茎でぶせるかたさ(バナナくらい)
味付け
ごく薄味(ごく少量の調味料や油)
食材
炭水化物
米、麺類(うどん、そうめん、スパゲッティ)、食パン、いも類(じゃがいも、さつまいも、里芋、やまいも)
ビタミン・ミネラル
根菜類(にんじん、大根、かぶ、たまねぎ、ごぼう)
葉物(ほうれん草、小松菜、キャベツ、白菜、レタス、春菊、長ねぎ、ちんげん菜、もやし)
野菜(かぼちゃ、トマト、ブロッコリー、とうもろこし、アスパラガス、えんどう豆、なす、きゅうり、青のり、ピーマン、きのこ、ひじき)
果物(りんご、みかん、いちご、桃、メロン、すいか、バナナ、なし、ドライフルーツ)
タンパク質
豆腐、しらす、じゃこ、魚介類(ひらめ、かれい、たら、鯛、鮭、めかじき、ツナ、青魚、ほたて貝柱水煮缶)、豚肉、牛肉、鶏肉(ささみ、ひき肉)、レバー、納豆、プロセスチーズ、粉チーズ、卵、きなこ
調味料
だし、塩、しょうゆ、みそ
[ ポイント ]
離乳食から半分以上の栄養を摂取する必要があるため、栄養バランスが重要となる時期。
生活習慣に慣れるためにも、毎日同じ時間に食事をすることが望ましい。
食べる量に個人差があるので、1日ではなく5~7日程度でバランスをとるようにする。
好き嫌いで食べない時は無理強しなくて良い。別の日に出すと食べることもある。
大人の食事を取り分けて調理したりベビーフードも取り入れて無理なく進める。
自主性も大切にして、自分から食べ物に手を出すようになったら手で持って食べられるものも用意する。
パクパク期(12~18ヶ月頃)
大人に近い食事がとれるように徐々にしていく時期。授乳も回数を減らし卒乳します。
回数
1日3回の離乳食と1~2回の捕食(おやつ)
授乳
次第に減らしていく
おかゆ
軟飯~ごはん
かたさ
歯茎でかめるかたさ(ゆで卵の白身や肉団子ていど)
味付け
薄味(少量の調味料や油)
食材
炭水化物
米、麺類(うどん、そうめん スパゲッティ)、食パン、いも類(じゃがいも、さつまいも、里芋、やまいも)、中華乾麺、ビーフン、春雨、蒸しパン、マフィン
ビタミン・ミネラル
根菜類(にんじん、大根、かぶ、たまねぎ、ごぼう)
葉物(ほうれん草、小松菜、キャベツ、白菜、レタス、春菊、長ねぎ、ちんげん菜、もやし)
野菜(かぼちゃ、トマト、ブロッコリー、とうもろこし、アスパラガス、えんどう豆、なす、きゅうり、青のり、ピーマン、きのこ、ひじき、セロリ、たけのこ、アボカド、かんぴょう、きくらげ)
果物(りんご、みかん、いちご、桃、メロン、すいか、バナナ、なし、ドライフルーツ、くだもの缶詰)
タンパク質
豆腐、しらす、じゃこ、魚介類(ひらめ、かれい、たら、鯛、鮭、めかじき、ツナ、青魚、ほたて貝柱水煮缶、貝、たらこ、干物、桜えび)、豚肉、牛肉、鶏肉(ささみ、ひき肉)、レバー、納豆、プロセスチーズ、粉チーズ、卵、きなこ、はんぺん、ハム、卵豆腐
調味料
だし、塩、しょうゆ、みそ、ゴマ油、カレー粉、マヨネーズ、ケチャップ
[ ポイント ]
食べられるものが多くなり、大人の食事を取り分けで準備でき負担が減りますが、反面、「好き嫌い」や「ムラ食い」「ばっかり食べ」などの癖で悩む時期。
子どもが食べなくても、いろいろな食材を準備し視覚で慣れさせたり抵抗感をなくしましょう。
1回に食べられる量が少ないため、おやつは必要です。お菓子ではなく、果物、いも類、乳製品など食事の補完となるものを選びます。
自主性を育てるために、手づかみで食べられるものや、スプーンやコップなどの食器も自分で持たせ、出来るだけ自由にさせます。
ダニアレルギーとは
ダニが原因となってアレルギー症状が起こる病気で、喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎の7割がダニが原因だと言われています。ダニの消化管にある酵素(タンパク質)がアレルゲン(アレルギー原因物質)となっており、ダニの糞と死骸に多く含まれ、小さな粒子となって体内に侵入してアレルギー症状を起こします。
アレルギー対策としては、除去することが望ましいですが、ダニはどこの家にも生息しており、完全に除去することはできません。ですので、アレルギー対策としてできることはダニの数を減らすこととダニを増やさないことです。手順としては、①ダニを退治すること、②アレルゲンとなるダニの死骸と糞を除去すること、③ダニが増えないようにすることです。
また、ダニは繁殖力が強く、18日~29日で卵から孵化し、生まれたばかりの幼ダニから成ダニに成長するまでには2ヶ月程度かかります。寿命は3ヶ月~1年程度で、その間に産卵をして爆発的に数が増えていきます。生息に適している湿度と温度になる6月~8月は一気にダニの数が増え、これに比例してアレルギー患者さんも増えます。
この産卵のサイクルも考慮して、ダニ退治、アレルゲン除去を行うことで効率的にアレルゲンを減らすことができます。
● ダニの種類
主なダニの種類は3種類で、このうち、ヒョウヒダニ(チリダニ)が一般的にアレルギーの原因のダニとして知られています。
ダニが原因となるアレルギー
● 気管支喘息
気管支(気道)で炎症が起きて空気の通り道が狭くなり、さらに痰などが出て更に気道が狭くなることで呼吸困難、咳、喘鳴(呼吸をする時にヒューヒューという音がする)などが起こる病気です。小児喘息は8%~14%、成人の喘息では9%~10%の罹患率、原因は、ダニやハウスダスト、ペットのフケ、カビなどが原因と言われています。
● アトピー性皮膚炎性皮膚炎
かゆみを伴う湿疹を繰り返す皮膚炎で、アレルギーのある人に発症しやすい病気です。
アレルギーを持っている人が多く、極度の乾燥肌であることも特徴で、皮膚表面の角質が荒れてアレルゲンが新入しやすくなることと皮膚の乾燥から、かゆみを感じやすくなり、爪で掻き壊すため更に湿疹の状態が悪くなるという悪循環に陥り慢性化します。
1才までに65%が発症し、5才までに90%が発症すると言われ、通常では6ヶ月以上症状が継続する場合慢性と診断されます。(乳児の場合は2ヶ月以上)
● アレルギー性鼻炎
くしゃみ、鼻水、鼻が詰まる(鼻閉)などの症状が起こる鼻炎です。日本人の5人に1人は、この鼻炎に掛かっているとも言われ、原因は、ダニやハウスダスト、花粉などです。
アレルギー性鼻炎の種類
特徴・原因
通年性アレルギー性鼻炎
1年を通して存在し、冬に比較的強い症状が出る。サラサラとした水のような鼻水、鼻づまりが繰り返し起こる。合併症として、ぜんそくやアトピー性皮膚炎が起こることもある。
季節性アレルギー性鼻炎
一定の季節に限って症状が現れる。そのほとんどは「花粉症」と呼ばれる。鼻の症状のほか、目のかゆみ・充血(アレルギー性結膜炎)、のどの違和感、皮膚のかゆみ・湿疹、咳、頭が重たい感じなどの症状が出ることがある。
ダニの生態
ダニの発生が多い時期と場所
1年の中でダニが一番発生しやすい時期は、6~8月です。湿度、温度が最も高くなる時期に繁殖します。
室温 25度〜30度
湿度 60%〜70%
● ダニの多い場所
1番ダニが多いのは、寝具(枕、マットレス)です。ダニの発生条件である「温度」「湿度」「エサ(人のフケやアカ)が多いところだからです。
● 家の中でダニの多いところ
1位:寝具(枕、マットレス)
2位:カーペット
3位:ソファ
ダニ対策のための寝具の手入れ方法
1 丸洗い
2 布団を干す
3 掃除機をかけて除去する
4 ダニが侵入できない目の細かなシーツを使う
● ダニ除去率
(A)排泄物
布団
除去作業
除去前
除去後
除去率
A
たたく
10,300
13,600
-32.0%
B
たたく+掃除機
23,700
13,900
41.4%
C
掃除機
28,900
14,900
48.4%
(B)虫体
布団
除去作業
除去前
除去後
除去率
A
たたく
12,300
15,500
-26.0%
B
たたく+掃除機
36,200
19,600
45.9%
C
掃除機
40,300
24,300
39.7%
(引用:『ダニ・カビ完全対策』小峰裕己 編著)
ダニ対策年間スケジュール
一度にダニ対策を行うのではなく、ダニの活動期、繁殖期に合わせて小まめに何回も行って駆除すると効果的です。
●計画性をもって定期的に駆除しましょう。
●カビはダニのエサになるため予防する(結露、洗濯物の室内干し、長時間の加湿器使用)
●布団を小まめに干す。
●部屋の換気を行う。
●室内の湿度を60%以下に保つ。
退治→除去→維持の3段階が効果的
ダニアレルギーの対策のためには、ダニを退治するだけでは足りず、死滅したダニを除去することが必要です。そして、その後、産卵などで再度増えないようにケアをすことでダニの数を減らすことができます。
ダニ対策のためには、まずダニを死滅させることが必要です。しかし、ダニを死滅させても、残った死骸をそのままにしていてはアレルギーの原因となります。また、その後放置してしまっては、産卵などにより再度ダニが増えてしまうため、ダニ対策では、①ダニ退治→②ダニアレルゲンの除去→③ダニ増加防止を繰り返し行うことが大切です。
ダニ退治
ダニを死滅させる方法は、熱処理(50℃で死滅)、乾燥処理、洗濯、薬剤散布 の4通りです。それぞれの処理の効果は下記の通りです。
効果
費用
評価
家庭用洗濯機
△
低
シーツ、カバー、衣服であれば十分ダニを洗い落とせますが、毛布や布団などの分厚いモノにはダニ退治効果はあまりありません。
布団乾燥機
○
高
1度の使用ではあまり効果はありませんが、朝昼2回連日行うことでダニ退治効果が見込めます。布団、マットレス、畳など様々なものに応用できます。
天日干し
△
低
1度ではほぼダニ退治効果はありませんが、こまめに行うことでダニ抑制効果が見込めます。黒い布を被せることで効果UPが見込めます。
掃除機
△
高
表面にいるダニの除去には効果がありますが、生地内部にいる大半のダニにはほとんど効果がありません。ダニアレルゲン除去に有用です。
クリーニング業者
◎
高
費用こそ高いですが、手軽でほぼ確実にダニを退治してもらえます。
スチームアイロン
○
中
殺ダニ効果は高いですが、対象物を傷めないか確認し、事後の湿気処理をきちんと行う必要があります。
ダニ取りシート
△
中
即効性こそないもののダニをじわじわ減らせられます。大発生後のダニ対策には向きません。本当にダニがいるか確認できます。
ダニ駆除薬剤
○
低
リーズナブルにダニを退治できますが、使いすぎには要注意です。
除湿機
×
高
湿度を抑えることでダニ発生の予防ができますが、大発生してしまったダニの退治方法には向きません。
アロマ
×
低
ダニを追い払う効果はありますが殺ダニはできません。一時シノギのダニ退治となります。
熱湯
◎
低
手軽で効果的だが、素材を痛める。素材によっては使用感を大きく悪化させるので非推奨。
アトピー性皮膚炎とは
かゆみを伴う湿疹を繰り返す皮膚炎で、アレルギー体質のある人に発症しやすい病気です。
皮膚表面の角質が荒れてバリア機能が弱くなり、細胞間脂質のセラミドが失われていることから皮膚の吸水能力と保水能力が低く、極度の乾燥肌が特長です。また、表面が荒れていることからアレルゲンが侵入しやすく、その刺激によりかゆみを感じやすく、爪で掻き壊すために更に湿疹の状態が悪くなるという悪循環に陥り慢性化します。
1才までに65%が発症し、5才までに90%が発症すると言われ、通常では6ヶ月以上症状が継続する場合慢性と診断されます。(乳児の場合は2ヶ月以上)
また、乳児の場合は、乳児湿疹と混同されることがありますが、日本皮膚科学会による「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」では、下記を基準として診断されています
● かゆみがある
● 湿疹
● 赤ちゃんの発疹は、頭、顔にはじまって、体幹や四肢に下降してくる
● 乳児期では2ヶ月以上、その他では6ヶ月以上湿疹が続いている
● アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎で一番辛いのは皮膚のかゆみで、夜も眠れず落ち着きません。また酷い乾燥肌で刺激を感じやすく、これもかゆみを感じる原因となっています。このかゆみがアトピー性皮膚炎の一番大きな苦しみでOQLを下げる原因になると同時に、掻き壊しによる湿疹の悪化と慢性化に繋がっています。
● 湿疹の状態と変化~湿疹三角
アトピー性皮膚炎は、急に悪くなったり、良くなったりする病気ではなく、変化を繰り返して慢性化、もしくは治癒します。湿疹の変化の過程を示したものが湿疹三角形で、どのように変化をしていくのか、その過程を知っておくことで、症状の進行度合いが理解でき、アトピー性皮膚炎の治療の助けになります。
紅斑(こうはん)
炎症により毛細血管が拡張し赤くなった状態
丘疹(きゅうしん)
蕁麻疹のように皮膚がふくらんだ状態
小水泡(しょうすいほう)
浸出液が増えて水泡となった状態
膿疱(のうほう)
炎症を起こし膿んだ状態
湿潤(びらん)
水疱や膿疱が破けた状態
痂皮(かひ)
皮膚表面に出た滲出液が固まった状態
落屑(らくせつ)
炎症の部位の表面が剥がれる状態
苔癬化(たいせんか)
皮膚の炎症が長く続いて、ごわごわと厚く硬くなった状態。
アトピーの症状としては、慢性的で強いもの。
色素沈着(しきそちんちゃく)
急性湿疹を繰り返して皮膚が黒ずんだ状態
● アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の原因として、「体質的な要因」と「環境的な要因」があり、その二つの要因が重なった時に、アトピー皮膚炎の症状があらわれると考えられます。また、また、そのときの体調などによっても、症状が出る時と出ない時があり異なりますが、これはアトピー性皮膚炎が、いくつもの要因が重なって発症する「多因子性の病気」であるためです。
体質に関する要因
・アトピー要因
・皮膚のバリア機能低下
環境に関する要因
・アレルゲン(アレルギー症状の原因となる物質)
食物、ダニ、ほこり、カビ、花粉、動物の毛やフケなど・アレルゲン以外の刺激
汗、衣類に夜摩擦、乾燥、ひっかき傷、「洗剤」などの日用品、化粧品など・その他
寝不足、過労、ストレスなど
● アトピー性皮膚炎の治療方法
アトピー性皮膚炎は遺伝的要因に加えて、体質や環境など様々な内的、外的要因を持った皮膚病のため、今のところ完治するための治療方法はありません。そのため、症状を軽減するための対症療法が原則となり、治療の目標は、かゆみや湿疹などの症状が治まり、その状態を薬(外用薬)を使わなくても、保湿剤のみで維持(コントロール)できることになります。
1
ADでは正常に見えてもドライスキンが存在する
保湿はきれいになってもずっと続ける
2
かゆみや皮膚が硬くゴワゴワ触れる
炎症細胞がたくさん
↓
炎症を抑えよう
↓
保湿したあと重ねてステロイド・プロトピックをおよそ2週間連続して塗る
3
2週間ほど塗ると大分収まってくるが、一部に赤みやゴワゴワが残る
保湿は広く全体に、残った赤みやゴワゴワにステロイドやプロトピックの外用薬を塗る
4
治療で赤みやかゆみがとれ、皮膚がやわらかくなった
ステロイド・プロトピックを休み保湿のみにする
5
再び赤くゴワゴワになりかゆくなった
保湿外用薬には一旦悪化した皮膚炎を抑える力はない
↓
赤くなったところ・ゴワゴワ硬いところ・かゆいところにステロイド・プロトピックを再開。もちろん保湿は続けて
6
繰り返し治療していくとだんだん使用するステロイド・プロトピックが減ってくる
安心
↓
もう一度、一時期皮膚炎がおさまっても、皮膚炎を起こしやすい体質そのものはなかなか変わらない
↓
皮膚炎が悪化したら保湿外用薬だけに頼らず、迷わずステロイドまたはプロトピック外用薬をぬりましょう。
● アトピー性皮膚炎の治療薬
現在のアトピー性皮膚炎治療のガイドラインは、主にステロイド外用薬と保湿剤を用いたものになり、症状や部位によって薬の強さを変えて処方し、症状が軽くになるに従って弱いステロイド薬に変更したり、塗る量を少なくするなどして徐々にステロイド薬を減らし最終的には保湿剤のみを使用して皮膚の状態を維持コントロールします。
ステロイド外用薬について ステロイドとは副腎皮質という臓器で作られるホルモンで、抗炎症作用と免疫抑制作用があります。ステロイド外用薬は、これを人工的に作ったものでアトピー性皮膚炎の外用薬以外にも、注射や内服薬、吸入薬、点鼻薬、点眼薬など様々な薬に使われています。効き目の強さによって5段階のレベルに分かれており、症状が出ている部位のステロイド吸収率を考慮して処方されます。
● ステロイドのレベル
ストロンゲスト
0.05%
クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート®)
0.05%
ジフロラゾン酢酸エステル(ジフラール®、ダイアコート®)
ベリーストロング
0.1%
モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ®)
0.05%
酢酸プロピオン酸ベタメタゾン(アンテベート®)
0.05%
フルオシノニド(トプシム®)
0.05%
ベタメタゾンプロピオン酸エステル(リンデロン-DP®)
0.05%
ジフルプレドナート(マイザー®)
0.1%
アムシノニド(ビズダーム®)
0.1%
吉草酸ジフルコルトロン(テクスメテン®、ネリゾナ®)
0.1%
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(パンデル®)
ミディアム
0.3%
吉草酸プレドニゾロン(リドメックス®)
0.1%
トリアムシノロンアセトニド(レダコート®、ケナコルトA®)
0.1%
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ®)
0.05%
クロベタゾン酪酸エステル(キンダベート®)
0.1%
ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド®)
0.1%
デキサメタゾン(グリメサゾン®、オイラゾン®)
ウィーク
0.5%
プレドニゾロン(プレドニゾロン®)
● ステロイドの吸収率
● ステロイド外用薬の使い方
FTU(フィンガーチップユニット)という使い方が推奨されています。これは、外用薬の使用量と塗る面積の目安を定めたもので、軟膏の場合であれば、大人の人差し指の第1関節に乗る量(0.5g/約1cm)が1FTUで、それを大人の手のひら2枚分くらいの面積に塗る方法です(体表面積の約2%に相当)。ローションの場合は、1円玉大が1FTUとなります。
● ステロイド外用薬の副作用
・皮膚萎縮(皮膚が薄くなること)
・毛細血管拡張(血管が網の目状に見える)
・多毛
・ステロイドざ瘡(ニキビ)
・ステロイド潮紅
・細菌・真菌・ウィルスによる皮膚感染症
・アレルギー性接触皮膚炎
[ タクロリムス軟膏 ] ステロイド外用薬以外の外用薬として認知されている薬で、2才以上を対象に処方されます。
顔の湿疹に対してはステロイド外用薬のミディアムクラス以上の有用性が認められており、副作用としてほてりなどの刺激の副作用がありますが、症状の改善に伴い刺激は薄らいでいきます。主に顔や首などの皮膚が薄くステロイドの吸収率が高い部位に処方されることが多いのが特徴です。
● アトピー性皮膚炎の重症度の診断
アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬(塗り薬)が中心となりますが、効き目の強さよって弱いものから強いものまで5段階のレベルに分かれています。そのため、アトピー性皮膚炎は症状を見て重症度を診断し、それに合った薬が処方されます。また、体の部位によってステロイドの吸収度が異なるため、同じ症状でも塗る場所によってレベルの異なる薬が処方されます。
アトピー性皮膚炎の重症度の外用薬処方の診断基準
皮膚症状の重症度と選択される外用薬(日本皮膚科学会ガイドラインより)
皮疹の重症度
外用薬の選択
軽徴
炎症症状に乏しい乾燥症状主体
ステロイドを含まない外用薬(保湿剤など)
軽症
乾燥および軽度の紅斑、鱗屑などを主体
ミディアム以下のステロイド外用薬
中等症
中等症までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹、掻爬痕を主体
ストロングないしミディアムクラスのステロイド外用薬
重症
高度の腫脹/浮腫/浸潤ないし苔癬化を伴う紅斑、丘疹の多発、高度の鱗屑、痂皮の付着、小水疱、びらん、多数の掻破痕、痒疹結節などを主体
必要かつ十分な効果のあるベリーストロングないしストロングクラスの外用薬。
痒疹結節でステロイドの効果が得られない場合はその部位に限定してストロンゲストの使用もある。
アトピー性皮膚炎の肌の特徴
皮膚は、一番表面にある角質層の中の皮脂膜、天然保湿因子、角質細胞間脂質などにより、体の外からの異物の侵入を防ぐとともに、水分の蒸散を防いでいます。これをバリア機能と呼び、アトピー性皮膚炎では、この機能が弱まっているために湿疹、かゆみ、皮膚の乾燥が発生します。そして、それらが影響し合ってかゆみが増幅します。
アトピー性皮膚炎の皮膚の特徴とそれによる肌への影響は下記のようになっています。
皮膚の状態
影響
症状
皮膚表面の角質層が荒れている
バリア機能低下が低下してアレルゲンや細菌などが皮膚内部に侵入しやすくなる
免疫細胞が働いてヒスタミンを過剰に放出しかゆみを感じる
知覚神経が皮膚表面にまで伸びて刺激を感じやすくなりかゆみを感じる
細胞間物質(セラミド)が失われている
水分が蒸散しやすく、水分を蓄えることができない
皮膚の乾燥が進み痒みを感じやすくなる
アトピー性皮膚炎の悪化サイクル
アトピー性皮膚炎の悪化の原因となっているのはかゆみによる掻き壊しで、掻くと余計にかゆみを感じさらに掻き壊して症状が次第に悪化しきます。このかゆみを感じるのサイクルを「イッチ・スクラッチサイクル」と呼び、悪循環の仕組みを図式化したものです。
アトピー性皮膚炎の治療上の注意点
アトピー性皮膚炎の治療における最終目標は、かゆみや湿疹などの症状が治まり、その状態を薬(外用薬)を使わなくても、保湿剤のみで維持(コントロール)できることです。
症状を改善するためには、かゆみをコントロールして「イッチ・スクラッチサイクル」を断ち切ること、また、良い状態を維持継続するためには、アレルゲンを減らし、食生活や睡眠などの生活習慣を見直し、保湿をしっかり行うことが重要です。
アレルギーとは
アレルギーとは、本来危険ではない異物に対して過剰に免疫反応が起こる病気です。
例えば、花粉症であれば、スギなどのアレルゲンを感知した時に、鼻水やくしゃみで体内への侵入を防ごうとしたり、鼻の粘膜を腫れさせて鼻を詰まらせ、花粉が鼻の奥まで入らないようにしたりする反応が起こります。
アレルギーの種類
代表的なアレルギーとして、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、花粉症などがあり、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」または「抗原」と呼ばれ、アレルゲンの種類、症状、アレルギーの場所などから病名が付けられてます。名前の付け方が複数あるため
ダニアレルギーで喘息とアレルギー性鼻炎を持っていたり、アトピー性皮膚炎でダニアレルギーと金属アレルギーがあるなどします。
症状の場所から付けられた病名
気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎
アレルゲンから付けられた病名
ダニアレルルギー、花粉症、薬物アレルギー、金属アレルギー
症状から付けられた病名
蕁麻疹、アナフィラキシー、新生児・乳児消化管アレルギー
アレルゲンの種類
アレルギーの原因となる物質をアレルゲン(抗原)と呼び、食物アレルゲン、吸入アレルゲン、接触アレルゲンなどに分類されます。子供のアレルギーで特に問題なのが、吸入アレルゲンと食物アレルゲンです。
アレルゲンの種類
吸入性アレルゲン
室内
ほこり、カビ、ダニ、畳、ソバガラ、ペットの毛、衣服、寝具(綿、絹、羊毛、羽毛)、建材に使用される化学物質(ホルムアルデヒド、VOCなど)
花粉
ブタクサ、カナムグラ、スギ、アカマツ、ススキ、ヒメガマなど
カビ
アルテルナリア、ペニシリウム、カンジダ、クラドシポリウム、アスペルギルスなど
食物性アレルゲン
卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、大豆、いか、いくら、鮭、さば、牛肉、鶏肉、くるみ、やまいも、オレンジ、キウイフルーツ、もも、りんご、バナナ、ゼラチン、あわび、まつたけ、ごま、カシューナッツ
接触性アレルゲン
化粧品、塗料、衣服、金属、うるし、ラテックス(ゴム)、寝具類、ヨード、洗剤
※出典『アトピー・アレルギー克服応援ブック』NPO法人アトピッ子地球の子ネットワーク(著) 金岡出版
アレルゲンは表のようにくっきりと分かれるものではなく、食物性アレルゲンの小麦粉を吸い込んで喘息を起こしたり、卵が皮膚に触れて蕁麻疹を起こす場合もあります。
また、食物性と吸入性の2種類以上のアレルゲンを持っている場合もあり、複雑化していることもあります。
食物性アレルゲンの場合、原因となるのは主に分子量の大きいタンパク質です。
通常は、消化酵素でアミノ酸まで分解されてから吸収されるため、IgEが反応してヒスタミンを放出することはありません。
しかし、子供の場合などは消化吸収力が未熟なためにタンパク質を十分に分解できなかったり、腸管が炎症を起こして腸管壁に穴が開き(リーキーガット)、未消化のタンパク質が血管内に侵入することで食物アレルギー反応を起こしてしまうことがあります。
消化吸収能力が高まるにつれて、自然と症状が落ち着いてくることもありますが、一度アレルギーを起こすと抗体記憶により、抗原情報が残りますので注意が必要です。
アレルギー体質とは
アレルギー疾患を持っている人は、よく「アレルギー体質」と言われますが、これは体質的にアレルギーを起こしやすいことを指しています。アレルギー体質は、ヘルパーT細胞である「Th1」と「Th2」のバランスが崩れており、通常であれば異物として認識されない花粉やダニ、卵などのアレルゲンに対して過剰に反応し、IgE抗体を産生しやすい体質です。しかし、アレルギー体質であれば必ずアレルギーを発症するわけではありません。アレルギー発症は、アレルギー体質、アレルゲン、環境要因の3つが重なり初めて発症すると言われています。
また、アレルギーを引き起こす原因物質を、アレルゲン(または抗体)と呼び、ハウスダストやダニ、花粉、食べ物などが良く知られているアレルゲンです。アレルギー体質は、アレルゲンに対して過剰に反応する体質で、IgE抗体を産生しやすく、血液中の量が多いのが特長です。
IgEとは、免疫グロブリンEというたんぱく質で、アレルゲンと結合することでヒスタミンを放出する。ヒスタミンは炎症などの原因となる物質で、健康な人では微量しか検出されませんが、アレルギー体質の人は血液中に多く高値で検出されます。
アレルギーコップ
アレルギーを理解する方法として、「アレルギーコップ」という表現を使うことがあります。
私達はだれもがアレルギーコップを持っており、アレルギー体質の人とそうでない人の違いはコップに「アレルギー体質」という要素が入っているかどうかの違いだという考え方です。
コップの中には、人それぞれのアレルゲンや食生活、生活環境、ストレスなどのアレルギー発症の要素が入っており、それらでコップがいっぱいになり、溢れる時にアレルギーを発症します。
アレルギー体質の人は、そうでない人と比べて、アレルギーを発症する要素が多く、アレルギーを発症しやすくなります。また、コップの大きさは人それぞれで、重症度にも関係しています。
大小はあるものの、どんな人でもコップに要素が蓄積されると、アレルギー発症のリスクがあります。
アレルギー体質の人で自分のアレルゲンが分かっている人は、日々の生活でそれらを除去するように注意し、食事や睡眠などの生活習慣にも気を付けることでアレルギー症状の発症のリスクを減らすことが見込めます。
アレルギー反応のメカニズム
1. アレルゲンが体内に侵入し抗体が産生される
2. IgE抗体は、粘膜などにある肥満細胞の表面に付着した状態になります(感作)。
3. 再び体に同じアレルゲンが侵入すると、肥満細胞上のIgE抗体に結合しヒスタミンが放出され、アレルギー症状を発症
免疫とは
免疫とは、ウィルスや細菌などの有害な物質から体を守る反応の事で、免疫細胞が体内に侵入してきた時に、病気にならないよう自分の体とそれ以外を区別して排除する働きです。例えば発熱して病原菌と闘ったり、くしゃみや鼻水で体外に異物を排出しようとする反応は免疫反応の一部で、不快な症状ではありますが、このような反応が無いと私達の体は安易に有害物質に侵されて病気になってしまいます。
● 免疫の働き
感染の防衛
インフルエンザなどの病原性ウィルスや病原菌からの感染を防止。体にとっての異物を排除。
老化や病気の予防
新陳代謝を活性化。機能低下や細胞組織の老化・破壊などによる病気を予防。肌荒れやニキビなどを防ぐ美容効果。
健康の維持
疲労回復。病気や傷などの回復・治癒。ストレスに強い体をつくる。肩こりや腰痛など体の不調の予防・改善。
異物などを正確に識別
異物かどうかを判断。がん細胞、ウィルス、病原菌など、本来の自分の細胞と違うものを区別する。
抗体を産生
ウィルスに対抗する抗体をつくる。はしかやおたふく風邪が「二度かかり」しないのは抗体ができるため。
がんなどの予防
体の中で変異したがん細胞を発見し、攻撃し、排除する。
参考:安保徹の食べる免疫力
免疫の役割を担う免疫細胞
免疫の役割は、主に血液の中の白血球が担います。白血球は様々な免疫細胞で構成されており、大きく分けると顆粒球、リンパ球、単球の3種になります。
● 顆粒球の種類と働き
特定の色素に染まる性質があり、染まりやすい色素の種類により「好中球」「好酸球」「好塩基球」の3種に分かれます。
好中球
もっとも数が多く顆粒球の90%以上を占めます。主に細菌やカビなどを処理する役割を果たします。異物に向かって進む性質「遊走能力」を備え、異物に近づき、強い貪食能力(※)で異物を細胞内に取り込みます。また強い殺菌能力も備えており、取り込んだ異物は酵素や活性酸素によって消化・殺菌・分解され死滅します。好中球自身は、異物を取り込んだ後に死滅し、その死骸は膿となって体の外に排出されるか単球(マクロファージ)によって処理されます。
ケガをした際、膿(うみ)が出てくることがありますが、これは好中球が異物を取り込んで死滅させたあとの好中球の死骸です。
※貪食能力:細胞が細胞の外にある個体や液体などの物質を細胞内に取り込む能力
好酸球
顆粒中の5~9%を占め、好中球と同様に、遊走能力、貪食能力、殺菌能力を備えています。好中球との違いはその対象で、花粉や寄生虫など細菌より大きいものに対して反応します。特殊な蛋白を出し、寄生虫やその卵を処理すると同時に、好塩基球から出されたヒスタミンを分解(不活性化)してアレルギー反応を和らげる働きもあります。しかし、その一方で、アレルギーによる炎症の原因にもなるといわれており、アレルギーの他寄生虫感染によって増える傾向があります。
好塩基球
顆粒中の1%以下となり顆粒球中で最も数の少ない細胞です。顆粒の中に、ヒスタミンやロイコトリエン、ヘパリンといった物質が含まれています。顆粒の中で通常は不活化の状態で存在しますが、好塩基球の表面にある免疫グロブリンEというレセプターの働きによりヒスタミンなどを放出してアナフィラキシーなどのアレルギーや炎症反応を起こします。役割や寿命など不明な点が多い細胞です。
※レセプター
受容体とも呼ばれ、細胞表面の膜に存在して細胞膜の外側にある物質と特異的に結合する。細胞はレセプターにより特定の物質を見分け,細胞の外からきた情報を受け取ることができる。
● リンパ球の種類と主な働き
リンパ球は、免疫機能の中心的な細胞で、ウィルスや細菌などを攻撃し排除する役割を担っています。骨髄から生成されて胸腺やリンパ節などで成熟し、血管やリンパ管などを通って全身を巡り、ウィルスや細菌などの外敵の侵入を見張ります。そして、外敵を見つけたらすぐに攻撃して排除します。リンパ球の働きは幅が広く、皮膚やアレルギー、内臓の病気などに関わっています。
NK細胞
(ナチュラルキラー細胞)
NKとはナチュラルキラーの略で、生まれつき(ナチュラル)ウィルスや細菌を殺傷する(キラー)能力を持っていることから命名されました。NK細胞は、高い殺傷能力を持ち、単独で機能することが特徴で、常に全身を巡りウイルス感染した細胞や悪性細胞などを見つけ次第、直接攻撃して死滅させます。生まれながらに備わっている自然免疫機能で重要な役割を担っています。
T細胞(Tリンパ球)
T細胞(Tリンパ球)は、骨髄で生成されて胸腺で成熟するリンパ球で、「T」は胸腺 (thymus) に由来しています。細胞の表面にT細胞受容体(T cell receptor;TCR)を備え、
主に抗原を認識する役割を担います。
ヘルパーT細胞
[ Th1細胞 ]
細菌やウィルスに反応する細胞で、B細胞にその種類を伝達します。B細胞はこれを受けて抗体を生成してウィルスや細菌を死滅させ、同時にこの抗体情報を記憶します。
また、B細胞だけでなく、キラーT細胞やNK細胞、マクロファージなどの細胞も活性化し、貪食作用、消化酵素などにより攻撃して死滅させます。情報伝達の際Th1細胞が分泌するのが「IFN-γ(インターフェロンガンマ)」というサイトカイン(生理活性物質)です。[ Th2細胞 ]
Th2細胞は、ダニやカビ、花粉など、ウィルスや細菌より大きい物質に反応してB細胞に情報伝達し、B細胞で抗体を生成して攻撃します。その際Th2細胞が分泌するのが「IL-4(インターロイキン4)」で、Th1細胞から分泌される「IFN-γ」と「IL-4」は、互いに抑制し合ってバランスを保つように働いています。しかし、このバランスが崩れてTh2細胞の働きが優位になると、アレルギーになると言われています。
● 単球の種類と主な働き
白血球の中で一番大きく、白血球中2~10%を占める細胞です。骨髄で生成されて、血管中の血液内で数時間~数日間留まった後、血管の外に出てマクロファージや樹状細胞、ランゲルハンス細胞などに分化します。体内の死んだ組織、変異した細胞(がん細胞など)や体内に侵入した異物を貪食(※)して消化すると同時に、貪食した異物の抗原情報などを提示する役割を担う。
※貪食とは
体内の細胞が不必要なものを取りこんで消化し、分解する作用。貪食の対象となるのは、体内に侵入した異物(ウィルスや細菌など)、自然死した細胞、変異した細胞など。また、このような働きを持つ細胞は「貪食細胞」もしくは「食細胞」と呼ばれ、好中球、マクロファージ、樹状細胞など。
マクロファージ
貪食と抗原提示が主な機能となります。炎症の初期には好中球の働きが大きいですが、やがて多数のマクロファージが集まり強い貪食機能を発揮します。また、貪食して分解した異物の特徴を細胞表面に提示する機能(抗原提示)があり、これをヘルパーTリンパ球やBリンパ球が認識することで、サイトカインが放出されて免疫機能が働きます。
ランゲルハンス細胞
表皮に存在する樹状細胞で表皮全体の2~5%を占めています。皮膚から侵入しようとする細菌やウイルス、化学物質、かびなどの異物の他、放射線、紫外線、外気温等の刺激、皮膚内部の状況を常に脳へ伝達し、皮膚の均衡を保つ役割を担っています。
ランゲルハンス細胞と
アトピー性皮膚炎
表皮に異物が付着したり侵入した際、ランゲルハンス細胞がその異物を検知して抗原を調べ抗原情報を提示します。ランゲルハンス細胞は、IgEセレプターを持っていることからIgE抗体を介してアレルゲンを捕捉してアレルギー反応を加速させると言われています。
免疫システムが働くしくみ
① 異物の侵入(ウィルス・細菌・カビなど)
② マクロファージと樹状細胞が分析
③ 樹状細胞がリンパ節に移動して抗原情報をヘルパーT細胞に伝達
④ 抗原を認識できるヘルパーT細胞が活性化してB細胞に伝達
⑤ B細胞が抗原に合った抗体を生成し放出
⑥ 抗体が抗原と結合し不活性化
⑦ 不活性化した抗原をマクロファージと好中球が貪食
● 自然免疫と獲得免疫
免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。
自然免疫とは、もともと体に備わっている免疫機能で、単球であるマクロファージや
顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)リンパ球の中のNK細胞が働いて、身体に侵入した異物を攻撃したり貪食するなどして排除します。これらの働きで排除できなかった分については、リンパ球のT細胞やB細胞が働いて攻撃して排除しますが、この後者の働きを獲得免疫と呼びます。B細胞は抗体を作って異物を攻撃すると同時に、「免疫記憶」により抗体情報を蓄積するため、感染を繰り返す度に免疫力(抵抗力)が高まっていきます。
自然免疫
マクロファージや顆粒菌など、もともと体にそなわっている働きのこと
獲得免疫
T細胞やB細胞が生きていくうちに獲得する免疫のこと
● 免疫力の低下とは
「免疫力(抵抗力)が低下している」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これはどういうことで、どういうときに低下するでしょうか?
まず、疫力の低下(抵抗力の低下)とは、身体に侵入する異物を排除する機能が低くなることです。ウィルスや細菌を排除できないため、風邪やインフルエンザの感染症にかかりやすくなります。下がる原因としては、①加齢、②ストレス、③睡眠不足、④食生活、⑤運動不足などが挙げられます
①加齢
免疫力は20才前後でピークを迎えます。その後は年を取るに従って徐々に低下していきます。特に高齢になると免疫力の低下が顕著になり感染症にかかりやすくなります。
②ストレス
ストレスは自立神経のバランスを崩す原因となります。自立神経には交感神経と副交感神経があり、互いにバランスを取って調整していますが、ストレスによってこのバランスがくずれ、免疫細胞の量に変化が生じ免疫機能が正常に働かなくなります。
[ 交感神経が優位の場合 ]
アドレナリンが分泌され、アドレナリンのレセプターを持つ顆粒球が増加します。細菌の無いところで顆粒球が増えると大量の活性酸素が放出されて炎症などが起こります。また、血管が収縮して血流障害が起き、酸素と栄養が細胞に供給されなくなると同時に血管に老廃物が蓄積されます。
[ 副交感神経が優位の場合 ]
肉が弛緩して血管が広がることで血流が悪くなり、リンパ球が増えた状態なります。リンパ球は、アレルギーに関係する免疫細胞であるため、アレルギー症状が出やくなっている状態となります。
③睡眠不足
免疫細胞は睡眠時に活動が促進されます。また、リンパ細胞のうちのB細胞は睡眠時に抗体をつくるため、睡眠不足の状態では、免疫機能が働かず、抗体も生成されないという事になります。風邪などの感染症にかかった場合で、良く睡眠を取るというのは大変重要なことだということがわかります。
④食生活
ビタミン・ミネラルなどは免疫細胞の活性化や生成を促進します。また、砂糖(白糖)は、摂取して消化分解される際に、ビタミンBやミネラルが必要になり、大量に摂取することでビタミン・ミネラル不足に陥り、免疫の働きを低下させます。
⑤運動不足
運動不足は血液の循環が悪くなり、免疫系がうまく働かなくなります。また、NK細胞は、筋肉運動により活性化され、運動をしないと低下する性質があり、これらの要因で免疫力は低下します。
アレルギーと免疫細胞
● 子どものアレルギーが自然に治る理由
生まれた時点では、「Th2細胞」が優位ですが、成長するに伴い様々なウィルスや細菌が身体に侵入し、次第に「Th1細胞」の免疫の働きが活発になります。そのため、大人になるに従って「Th1細胞」と「Th2細胞」のバランスが取れ、正常な免疫の働きができるようになります。子供の時にアトピー性皮膚炎や、喘息、食物アレルギーがあっても、大人になってアレルギー症状が出なくなったという場合がありますが、その理由は免役バランスが保たれるようになった為です。
● アレルギー患者が増えている理由
しかし、現代では、以前に比べて衛生的な生活環境が整い、「抗菌」や「抗ウィルス」製品が溢れ、ウィルスや細菌に感染する機会が減少して感染することが少なくなり、結果として「Th1細胞」の免疫機能が働かず「IFN-γ」も分泌も促進されません。
反面、環境汚染や食生活の変化などで、「Th2細胞」が反応する物質が多くなり、サイトカイン「IL4」の分泌も活発になっています。
「IFN-γ」と「IL4」は互いに抑制しあって、バランスを保つのですが、生活環境がアンバランスな状態のため、「IL4」の分泌が過剰になる傾向があり、これがアレルギー患者が増加傾向にある背景です。
● B細胞
B細胞(Bリンパ球)は骨髄で生成されて骨髄内で成熟するリンパ球で、「B」は骨髄(Bone marrow)に由来しています。ヘルパーT細胞からの情報を受信し、身体に侵入したウィルスや細菌、ダニ・花粉などのアレルゲンに合った抗体(抗体)を作り放出することで異物を排除します。また、「免疫記憶」という機能を持ち、一度作った抗体を記憶する性質があり、一度感染したウィルスの抗体は記憶され、二回目に同じウィルスが身体に侵入しても発病しないのはこのためです。また、予防接種はこの特徴を応用したものです。
※抗体とは
ウィルスや細菌など身体に侵入する異物には抗原(それぞれを特定する目印のようなもの)に特異的に結合し、その異物を身体から排除するタンパク質で、免疫グロブリン(Ig)とも呼ばれます。異物が身体に入った際、その抗原とぴったりする抗体を作って放出し、異物と結合して不活性化します。また、抗体が異物と結合すると、貪食細胞のマクロファージや好中球が活性化し、異物を取り除きます。
動画コーナー
三塚先生に鼻水吸引について解説して頂きました!
ノズル挿入のコツ
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一時的に吸引力を上げる
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鼻水吸引のメリット
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上手に吸引する姿勢
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ボンジュールの使い方
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中耳炎
Q: こどもの中耳炎の場合、耳鼻科と小児科どちらを受診した方が良いですか?
(新生児の場合、乳幼児の場合、熱も出てる場合)
A: できれば耳鼻咽喉科がいいと思われますが、わからなければ小児科でももちろん大丈夫です。
Q: 鼻をすする癖があり中耳炎になってしまいました。癖を直す良い方法はありますか?
A: まずは鼻をすするくせを治さないといけません。本人に言い聞かせてはなすすりをすると耳が痛くなってしまうときちんと説明することが大事ですね。
Q: こどもの中耳炎で、こまめに鼻をかむ、鼻水吸引する以外の予防方法について教えてください。
A: まずはウイルスや細菌感染から中耳炎が引き起こされますので風邪予防が大事です。手洗いうがいをこまめにして、栄養をつけ風邪をひきづらく生活環境から改善しましょう。
Q: 中耳炎と目やには関係がありますか?
A: 鼻水が多くなると鼻を目をつなぐ鼻涙管を逆流して細菌が目のほうに達してしまいめやにが多くなります。
Q: 滲出性中耳炎はどうして耳に水が溜まるのですか?繰り返すのはなぜですか?
A: 耳と鼻をつなぐ耳管というところの機能がうまくいかないことが原因になります。
鼻水吸引関連
Q: 電動鼻水吸引器は何歳まで使えますか?こどもは何歳まで鼻がかめないものですか?
A: 大人になるまで使えます。鼻がかめないのはお子様によって年齢差があります。
Q: 両方の鼻が詰まってしまった時の鼻水吸引に関して注意することはありますか?
A: とくに普段の鼻水吸引と変わりはありません。
Q: 新生児がメルシーポット等の鼻水吸引器を使う場合は、ボンジュールなどの先が細いノズルがあった方がいいですか?なくても吸えますか?
A: もちろんなくても吸えます。鼻の孔が小さいのでほっぺをすこし引っ張りながら吸引してあげるとやりやすいです。
Q: 新生児の鼻水吸引をする時のノズルのあて方のコツを教えてください。
(小鼻を引っ張ると書いてありましたが、赤ちゃんにするのが難しかったので)
A: ほっぺをすこし引っ張りながら吸引するといいかもしれないですね。わからない場合には耳鼻咽喉科に受診して鼻吸引をしてもらいましょう。
Q: 吸っても吸ってもどんどん鼻水が出てくるのですが、一度にどれくらいの時間吸っていいなどの目安がありますか?
A: とくに目安はありません。
Q: こどもが寝た体勢と起きた体勢ではどちらがより多く鼻水を吸引できますか?
A: 起きていたほうが吸引がうまくできます。
Q: 吸引中に鼻血が出てしまいました。なぜですか?また吸っても大丈夫ですか?
A: 鼻粘膜を傷つけてしまった可能性が高いです。すこし待って鼻血が止まったことを確認してからであれば再度吸引しても問題ないです。
Q: 赤ちゃんの鼻水は何回吸引していいの?
A: 鼻水を吸引する回数の目安はありますか?とよくお母さんに聞かれますが、そんな時は、「特に目安はないですよ」とお答えしています。
赤ちゃんは自分で鼻をかめません。鼻水が詰まっていると、夜も眠れなくなり、おっぱいも上手に飲むことができないのです。鼻水が出ているとわかったら、回数にこだわらずこまめに吸引してあげましょう。
Q: 鼓膜チューブ留置術中も鼻水吸引をしていいの?
A: チューブ留置中に鼻水の吸引をすることは全く問題ありません。チューブ留置中だからこそ、ご家庭でも積極的に鼻水吸引をしましょう。
※鼓膜チューブ留置術中とは、鼓膜を小さく切開して鼓膜用の換気チューブをそこに留置し鼓室を換気できるようする処置です。
その他
Q: 鼻水が出ているこどもを病院に連れて行くタイミングを教えてください。
A: すこしの鼻水だと病院に行くのも躊躇してしまいますがほっておくと中耳炎や副鼻腔炎に移行してしまうこともあります。心配になったらすぐに病院に受診しましょう。
Q: 熱がなく鼻水だけ出ているときは病院に行ったほうがいいですか?
A: 熱がなくても鼻水が止まらない場合や黄色い鼻水のときには病院に受診しましょう。
Q: 白い鼻水、黄色い鼻水と、サラサラの水っ鼻の違いは何ですか?
A: 風邪の初期や花粉症・アレルギー症状の場合には白い透明な鼻水の場合が多いです。
黄色の鼻水のときには副鼻腔炎になっている可能性もあります。
Q: 風邪の時の鼻水とアレルギーでの鼻水、違いの見分け方はありますか?
A: 初期では見分け方が難しく目のかゆみややくしゃみがあるときには花粉症やアレルギーが疑われます。
Q: 花粉症のこどもにはどんな治療法がありますか?赤ちゃんでも薬を飲むのでしょうか?
A: 内服薬や点眼薬、点鼻薬もあります。症状によって内服することもありますので病院で相談しましょう。
Q: こどもの鼓膜が破れたらどうなりますか?
A: 中耳炎で鼓膜が破れた場合には耳垂れがでてきます。鼓膜は1日~1週間程度で閉鎖しますので経過をかならずみてもらうため病院に受診しましょう。
Q: こどもが飛行機に乗った際の耳抜きの仕方、教え方を教えてください。
A: こどもは難しいので水や麦茶、ミルクなどを離陸と着陸時にあわせて飲ませてあげましょう。
Q: 三塚先生が個人的にされているお子さまの健康管理の方法はありますか?
A: 手洗いうがいを徹底的にしています。
赤ちゃんの「いびき」について
第五回は赤ちゃんの「いびき」。放っておいて大丈夫?いびきをかく原因は?
赤ちゃんの半分くらいはいびきをかくことがあると言われていますが、いびきには睡眠時無呼吸症候群の可能性が潜んでいることも。
教えて三塚先生!
いびきの原因で最も多いのはアデノイド
赤ちゃんのいびきの原因で最も多いのは「アデノイド」。
鼻の穴のつきあたりにあり、このアデノイドが大きくなるとアデノイド増殖症と呼びます。空気の通り道を塞いでしまい、いびきの原因に。
赤ちゃんも睡眠時無呼吸症候群に?
いびきをかいている時に、一時的に呼吸が止まって見えることがあれば、睡眠時無呼吸症候群の可能性も。睡眠時無呼吸症候群の赤ちゃんは、しっかり睡眠が取れないので夜泣きが多く、昼間もぐずりがちです。
アデノイドの治療方法
ほとんどが成長とともに自然に治りますが、睡眠時無呼吸がある場合などはアデノイド切除手術の対象になります。
赤ちゃんがいびきをかいていたら、気軽に耳鼻科で相談してくださいね。
事前にスマートフォンでいびきの動画を撮っておくとスムーズにお話ができますよ。