妊娠中の体重管理
妊娠12週頃からはつわりも落ち着き、食欲も増してくる方が多くいらっしゃいます。お腹の中にいる赤ちゃんへ充分な栄養を届けるために食事はとても大切ですが、急激な体重増加は出産に影響を及ぼす可能性が高まります。体重増加の目安によく注意して、出産に備えるようにしましょう。
妊娠中における体重増加量の目安は妊娠前の「BMI(Body Mass Index)」の値により定められています。妊娠前の体型によっても、適正体重は異なります。
下記を参照し、ご自分の適正体重増加を確認してください。
BMI=妊娠前の体重(kg)/身長(m)²
妊娠前の体格指数(BMI)が18.5未満「やせ型」の体重増加目安:12〜15kg
妊娠前の体格指数(BMI)が18.5以上25.0未満「ふつう体型」の体重増加目安:10〜13kg
妊娠前の体格指数(BMI)が25.0以上30未満「肥満」の体重増加目安:7〜10kg
体格指数BMI25以上の体重増加目安:個別対応(上限5kgが目安)
● 目安体重の引き上げについて
日本産科婦人科学会は2021年3月、妊娠中の女性が出産までに増やすべき体重について、新たな指標を公表しました。新たな指標では体格指数(BMI)18.5未満の「やせ」の女性の場合は、従来に比べて3キロ多く体重増加することが推奨されます。この度の改訂の背景としては、日本で体重2500
妊娠中は太りすぎてもやせすぎても、母体と赤ちゃんに何らかの影響を与える可能性があります。太りすぎ・やせすぎによって生じる様々なリスクを確認しておきましょう。
● 妊娠中に太るリスク
妊婦中に目安値を超えて体重増加してしまうと、下記のようなリスクが生じる可能性があります。
妊娠高血圧症候群
母体の肝機能や腎機能、血液凝固機能などに障害が現れ、激しいむくみやけいれん発作等が生じます。また胎盤の働きを弱めてしまうため胎児が育ちにくくなったり、酸素の供給が難しくなってしまう場合がります。
妊娠糖尿病
体重の増加などが要因で、血糖値が上昇し糖代謝異常を起こします。妊娠糖尿病の方は、妊娠高血圧症候群も併発しやすくなります。
帝王切開分娩
産道にも脂肪がつくため、自然分娩が難しくなる可能性が高まります。
巨大児
巨大児で生まれた赤ちゃんは、分娩後に低血糖を起こしやすい傾向があり、様々なトラブルも多くなります。
膝や腰の痛み
急激な体重増加により、身体全体に負荷がかかり膝や腰の痛みを引き起こすことがあります。
微弱陣痛
陣痛が通常よりも弱くなり、出産までの時間が長引き母体に負担となる可能性があります。
他の病気への移行
産後に高血圧や腎臓病などの慢性疾患へ移行する可能性があります。
● 妊娠中にやせるリスク
一方、体重増加を制限するために、過度に体重増加を抑えることも禁物です。母体が推奨体重よりやせてしまうと、次のようなリスクを招く可能性があります。
☑ 低出生体重児での出産、胎児発育不全児
☑ 切迫早産または早産
☑ 母体の健康状態の悪化
☑ 貧血
妊娠中にやせすぎてしまうとまず第一に、出生児体重が2,500g未満の「低出生体重児」での出産リスクが高まります。低出生体重児は、身体機能に異常が生じ、成人後に高血圧や糖尿病等を発症する割合が増加することが報告されています。
母体の栄養が不足している状態からお腹の赤ちゃんに栄養供給するため、健康状態が悪化して、早産や胎児発育不全児での出産となる可能性も生じます。さらに妊娠中のトラブルに限らず、母体に様々な健康リスクが伴うため、体重の管理や栄養補給を適切に行うことが大切です。
3食のご飯を規則正しく食べ、食事の量に注意することが重要です。妊娠初期から後期にかけて、体重を理想的に増やすために気をつけたいことをご紹介します。
食事の摂り方
糖質や脂質の多いものを避けバランスの良い食事を心がけましょう。食事を思うように摂れずに体重が増えない場合は、少量の食事をこまめに摂るようにしてみてください。
料理や味付け
塩分は1日あたり6.5g未満に抑えるように注意。揚げ物などを避け蒸し料理などを取り入れたり、天然出汁や御酢などを活用して味に工夫をしてみてください。
運動
家事や散歩など軽度な運動を、無理のない範囲で続けましょう。運動はストレスの解消や気分転換にも最適です。ただし体重が増えすぎたからといって激しいスポーツは厳禁です。
体重や食事を記録する
毎日同じ時間に体重を計ると、体重管理へのやる気が促されます。また体重や食事を記録すると、食生活の見直しにも役立ちます。
体重管理は母体と赤ちゃんの健康のために欠かせません。あまり神経質になる必要はありませんが、急激な体重増加は様々なトラブルの原因になります。
食事内容の見直しや適度な運動、体重測定を習慣にし、無理のない範囲で体重管理をするようにしましょう。食生活の改善を行っても体重管理が難しい時は、担当医や助産師さんに相談するようにしてください。