“お口ポカン”を放っておくとこんな問題が起きてしまう!?
日本の子どもの約3割がお口ポカン
子さんがよく口を開いたままの状態でテレビを見たりゲームしていませんか?こんな様子をよく見かけたらちょっと注意が必要です。
「お口ポカン」と呼ばれるこの状態は「口唇閉鎖不全」(こうしんへいさふぜん)とよばれ、口腔機能発達不全症の一種です。口周りの筋肉が十分に発達していないと、常に口を閉じることができずにポカン口を引き起こします。ポカン口でいるとさらに筋肉の発達が遅れ、口唇閉鎖不全が悪化するという悪循環に陥ってしまうこともあります。
また、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などによって慢性的に鼻が詰まっていると、口呼吸となり、舌の位置が低位になる原因になります。舌が低位になると、上あごに舌圧がかからないため、上あごの側方への発達が不十分となり、顎が狭くなることがあります。
新潟大学と他の研究機関が行った日本での初の全国規模の疫学調査により、「お口ポカン」(口唇閉鎖不全)の有病率についてのデータが報告されています(全国66の小児歯科医院で定期的に受診している3歳から12歳までの子ども3399人を対象に実施)。
研究の結果、日本の子どもたちの実に30.7%が日常的に「お口ポカン」の状態を示していることがわかりました。この状態は年齢とともに増加し、地域による差は認められませんでした。
お口ポカンにはこれだけの問題が生じる可能性
お口ポカンはいったいどんな問題を引き起こすのでしょう。指摘されている問題をまとめてみます。
発音の問題
口唇閉鎖不全により、特に爆発音(「ぱ」、「ば」、「ま」などの音)を正しく発音するのが困難になります。これは唇が完全に閉じないために必要な気圧が確保できないために生じる構音障害です。
食べ物や飲み物の漏れ
唇が完全に閉じないため、食べ物や飲み物が口の外に漏れることがあります。これは特に流動性の高いもの(スープや飲料など)を摂取する際に生じます。
唾液の漏れ
口を閉じることが困難な場合、よだれが出やすくなります。
口腔衛生の問題
口唇閉鎖不全により口腔内が乾燥すると、細菌が繁殖しやすく、むし歯や歯周病のリスクを高めます。また、口内炎や他の歯肉の病気の発生率が高くなる可能性もあります。
睡眠中の問題
口唇閉鎖不全により睡眠中に口が開いた状態でいると口呼吸となり、睡眠の質の低下を招きます。さらには、無呼吸症候群などの呼吸関連のリスクが高まる可能性があります。
顔の筋肉への影響
口唇閉鎖不全症は顔の筋肉の機能不全やアンバランスをもたらします。これにより、顔の表情が不自然になったり、他の口腔機能(咀嚼や嚥下など)に困難さや機能不全を引き起こすことがあります。
お口ポカンはこのように日常生活に大きな影響が考えられるため、気が付いたらなるべく早く耳鼻科や歯科などに相談した方がいいでしょう。継続的な管理と日常的なケアによって症状の改善につながることがあります。
お口ポカンの改善策のおすすめは鼻水吸引器
お口ポカンの状態では、どうしても口呼吸をすることが多く、むし歯、歯周病、風邪、インフルエンザ、アレルギー、歯列不正、睡眠時無呼吸症候群など、様々な悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。お口ポカンの原因、状態やそのレベルによってもアプローチはさまざまですが、いくつかの対処方法を紹介します。
<アデノイド肥大の場合>
鼻の奥にあるリンパ組織のアデノイド肥大などで鼻閉をおこしているのであれば、薬物治療や手術の治療など、耳鼻科による治療が必要な場合があります。
<口腔筋機能訓練も可能>
歯列を取り巻く口腔周囲筋の機能を改善する口腔筋機能訓練(MFT)などを推奨している歯科医療機関もあります。
<鼻水対策での改善>
お口ポカンの大きな原因の一つとして考えられる鼻水や鼻づまりにはいくつかの有効なケア方法があります。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などが原因でお口ポカンとなっている場合は、医療機関を受診しアレルギー症状の薬物治療が必要です。また、薬局や処方される点鼻薬や鼻スプレーも有効です。
しかし、あまりお薬を頻繁に使いたくない場合の日常的なケアにはご自宅での鼻水吸引が有効とする耳鼻科医や歯科医も少なくありません。家庭での細かなケアで、鼻水、鼻づまりの状態を改善し、お口ポカンを少しでも良くすることが可能です。
鼻水吸引器は、赤ちゃんやお子さまの鼻詰まりを解消するために直接鼻の中の粘液を吸引する道具です。鼻づまりによる口呼吸の悪影響を防ぐことで、お口ポカンだけではなく、風邪の悪化を防ぐことができます。さらには鼻水や鼻づまりの初期段階で症状を改善することで、中耳炎や副鼻腔炎などの予防にもつながります。
特に、小さいお子さまは自分で鼻水がかめません。鼻水には細菌やウイルス、花粉、ハウスダストなどの病気の素が含まれているため、鼻水吸引器を使って体外に追い出すことで治りを早めることができます。使用する際はお子さまの鼻に傷をつけないように注意しながら優しく吸引してあげてください。
手動、電動、据え置きタイプ、ハンディータイプなどバラエティーに富んでいます。それぞれ長所、短所がありますので、一番使いやすいと感じた使いやすいものを選べばよいでしょう。
保険収載となった”お口ポカン”
お子さまのお口の健康な発達はとても大切なことです。最初に紹介した新潟大学などの研究によって、お口ポカンの病態解析や疫学的な実態も解明されてきています。こうしたエビデンスを受けて“お口ポカン”に関する検査や治療に関して保険収載が行われています。
口腔機能発達不全症
咀嚼や嚥下、構音機能が十分に発達していない15歳未満の小児を対象に、2018年から歯科保険に収載されています。2022年には保険適応の対象年齢が15歳未満から18歳未満と拡大されました。
口唇閉鎖力検査
2020年4月の診療報酬改定により、「小児口腔機能管理料」「小児口唇閉鎖力検査」が新設され健康保険の対象となりました。
まとめ
お口の健康は、「食べる」、「話す」、「呼吸する」という、生きていくために重要な機能を維持するためにとても大切なテーマです。日常の何気ないお子さまの行動や表情、様子などから早めに体のサインを読み取ることができれば、お子さまの健やかな成長を助けてあげることができますので、ぜひ本記事を参考にしてみてください。