保育施設におけるSIDS(乳幼児突然死症候群)の対策
SIDSの発症は年々減少傾向にありましたが、最近の研究から保育施設での突然死が増加していることが明らかになっています。保育所の需要が増加し、低月齢の子どもが預かられる期間が長くなっている中で、安全な保育環境の確立が喫緊の課題となっています。
慣れない環境でSIDS発生のリスクが急増
保育園でのSIDS発生事例に関する研究が進むにつれ、登園開始日からの在園期間が重要であることが明らかになってきました。調査によると、SIDS発生事例の14%が登園初日に発生し、一週間以内には全体の30%が発生していることが報告されています。特に預かり開始後の1週間以内のSIDSの危険度は、1〜2ヶ月後の4倍、さらに2ヶ月以降では17倍に上昇しているという結果が得られました。
子どもは環境の変化や慣れない場所への適応が苦手です。海外の研究によれば、子どもが初めての場所で一人にされた場合、SIDSの発症率が高まることが明らかになっています。子どもにとって、生まれて初めて母親から離れるという心理的ストレスを感じており、また集団生活による感染源への接触や疲労などの身体的ストレスが重なることで、SIDSのリスクが高まると考えられます。
保育現場でもSIDSの危険因子の排除を
保育施設でのSIDS発生事例を個別に見てみると、1歳の子どもが午睡中に泣き出した際、周囲の子どもの睡眠を妨げないために、いつもと異なる部屋で1人でうつぶせ寝させられたケースがありました。その子どもは別室で寝かされた30分後に心肺停止で発見されました。この時の子どもの在園期間は明らかになっていませんが、「いつもと異なる環境」で、「一人」で、「うつ伏せ寝」さらに「うつ伏せ」で寝かされたことが、SIDS発生の誘因と考えられています。
SIDSの対策と予防
乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防に関する一般的なガイドラインとして、乳児を仰向けで寝かせること、タバコの煙を避けること、適度な温度と柔らかすぎない寝具を使用することが推奨されています。これらの予防策は、自宅だけでなく保育所でも同様に重要です。
特にうつ伏せ寝は乳幼児の呼吸を妨げ、再呼吸(すでに吸った空気を再度吸うこと)を引き起こす可能性があります。これが乳幼児の酸素供給を阻害し、SIDSのリスクを高めると考えられています。世界的に実施されたBack to Sleepキャンペーンの成果からも、うつ伏せ寝を避けることがSIDS予防に有効であることが示されています。
また、感染症や熱性けいれんなどの他の危険因子も存在します。これらの危険因子や遺伝的要因が重なると、SIDSの発症リスクが高まる可能性があります。保育現場でも家庭同様に、これらの危険因子を排除し、対策を講じることが求められます。
最後に
保育施設を利用する保護者は、保育者と緊密な連携をとり、子どもの体調や様子を細かく伝えるよう心がけましょう。また、新たに保育所に入る際には、親が付き添った慣らし保育などを丁寧に行い、子どものストレスをできるだけ軽減することも重要です。
乳幼児突然死症候群(SIDS)は乳幼児の生命を脅かす深刻な問題であり、その対策は喫緊の課題となっています。社会全体で意識を高め、適切な対策を講じることで、すべての乳幼児が安心して成長できる環境を作り上げましょう。
<保育施設でのSIDS対策>
乳幼児を仰向けで寝かせる
乳幼児は仰向けの寝姿勢が最も安全です。保育者は乳幼児が仰向けで寝ていることを確認し、適切な寝姿勢を維持するよう配慮しましょう。
タバコの煙を避ける
タバコの煙はSIDSのリスクを増加させます。保育施設内では絶対的に禁煙とし、子どもたちを煙のない環境で育てるよう心がけましょう。
適切な温度と寝具
保育施設内の温度管理は重要です。過度な暖房や暑い環境はSIDSのリスクを高める可能性があります。また、柔らかすぎない寝具を使用し、乳幼児の窒息や過熱を防ぐようにしましょう。
ストレス軽減と安心感の提供
保育現場では子どもたちのストレスを軽減し、安心感を提供することが重要です。保護者との密な連携や慣らし保育の実施など、子どもが安心して保育環境に適応できるようなサポートを行いましょう。