SIDS(乳幼児突然死症候群)発生時の緊急対応
乳幼児突然死症候群(以下、SIDS:Sudden Infant Death Syndrome)は、赤ちゃんが窒息や事故などが起きていないにもかかわらず、眠っているときに突然亡くなる病気です。
日本での発症頻度は6,000~7,000人に1人と推定されており、生後2~6ヶ月に多くみられます。SIDSは眠っているときに起きることから保護者が早期に気づくことが難しく、気づいたときには心肺停止状態になっていることが多いとされています。
乳幼児が呼吸をしておらず心肺停止状態となっている場合、心肺蘇生法を行うことで命が助かる可能性はあるのか、心肺蘇生法の手順や注意点とともに解説します。
SIDSと心肺蘇生法との関連性
心臓が停止してから早期に心肺蘇生法を行うことで一命を取り留める確率が上がるとのデータが存在します。ただし、SIDSのみに限定した場合、心肺蘇生法によって一命を取り留める確率が上がることを示すデータは存在しません。
しかし、心肺蘇生法には心臓を再び動かす効果が期待できるため、乳幼児が呼吸をしていない場合は早急に開始することが重要です。心肺停止の状態を確認してから通報し、救急車が到着して心肺蘇生法を開始するまでには、平均12分程度かかります。
この場合、救命率は数%といわれているのですが、これは脳に酸素が供給されていない状態で生命を維持できるのが3~4分程度とされているためです。また、時間の経過とともに脳がダメージを受けるため、1秒でも早く蘇生させる必要があります。
乳児の心肺蘇生法の手順
ここでは、心肺蘇生法の手順を紹介します。乳児に行う心肺蘇生法は、「胸骨圧迫」と「人工呼吸」、「AEDの使用」の3つです。ただ、SIDSは自宅で起こることが多く、AEDを持っている家はほとんどないため、AEDの使用は現実的ではありません。
そこで今回は、自宅でAEDが無い場合の心肺蘇生を解説します。もちろん、AEDが近くにあれば、AEDを使用するようにしましょう。AEDを用いた心肺蘇生は次回で解説します。
まず、異変に気づいたら名前を呼びながら肩の部分か、足の裏を叩いて反応を見ます。反応がなければ周囲の人に助けを求め、「あなたは119番通報してください」と具体的に指示します。家に自分一人しかいなかった場合は、可能なら携帯電話などで119番通報して胸骨圧迫を開始します。もし、近くに通信機器が無かった場合は、下記の心肺蘇生を2分間行った後に通信機器を取りに行き、119番通報を行います。
まず、胸骨圧迫を始めましょう。左右の乳首を結ぶ線の真ん中の少し下を2本の指で押します。このとき、胸の約1/3が沈む深さまで強く圧迫してください。速さは1分間に100~120回程度です。これを30回行ったら、人工呼吸を2回行うということのを絶え間なく続けます。
人工呼吸では、まずは片手をおでこに当て、もう片方の手の人差し指と中指をあご先に当て、持ち上げることで気道を確保します。そして、口と鼻を同時に自分の口で覆い、息を2回吹き込みましょう。吹き込む量は、子供の胸が軽く上がる程度です。
続いて、胸骨圧迫に切り替えてください。
また、どうしても人工呼吸が難しい場合は、胸骨圧迫のみでもしっかり行うことが大切です。
SIDSが起きる原因は解明されていないものの、リスク要因についてはガイドラインで示されています。傾向として、男児・早産児・低出生体重児・うつぶせ寝・両親の喫煙・人工栄養児・早朝から午前中・冬期に多いことがわかっています。
うつぶせ寝は避ける、たばこを吸わない、なるべく母乳で育てるなど、少しでもSIDSのリスクを抑えることから始めましょう。