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カンガルーケアは本当に効果があるの?
最新の研究やレポートから考察

細添田英津子先生監修

カンガルーケアって何?

カンガルーケアとは、新生児を母親や父親の胸の上に抱き、直接肌と肌を触れ合わせるスキン・トゥ・スキン・ケアの一種です。もともとは1970年代に南米コロンビアのボゴダという町の病院で保育器不足を補い、低出生体重児の生存率を上げるために開始されましたが、早産児や低出生体重児(2500g未満)のケアとして発展し、現在では正期産(37週以降)の赤ちゃんにも広く実施されています。その名称は、カンガルーが子どもをお腹の袋に入れて育てる姿に由来しています。
 

最新の研究やデータでまた注目されているカンガルーケア

近年、多くの研究がカンガルーケアの効果を科学的に証明しています。米国小児科学会(AAP)の2023年の報告では、カンガルーケアが赤ちゃんの生理的な安定性に役立つことが実証されています。具体的には、母親や父親の体温により赤ちゃんの体温が自然に調節され、低体温のリスクが減少するほか、赤ちゃんの心拍数や呼吸が安定しやすくなり、無呼吸発作のリスクが低下することが分かっています(米国小児科学会, 2023)。

また、世界保健機関(WHO)の2022年ガイドラインでも、特に低出生体重児や早産児に対し、積極的にカンガルーケアを推奨しています。WHOの報告によると、カンガルーケアはこうした赤ちゃんの成長促進や感染症リスクの低減、さらには生存率向上に対しても有効であることが示されています(WHO, 2022)。

母乳育児の促進効果も多くの研究から裏付けられています。カンガルーケアを実施することで、母乳の分泌が促進され、授乳成功率が大きく向上します。母乳育児は赤ちゃんの免疫力向上や母子双方の健康維持にもつながります。

 

父親の育児参加にも効果!?

心理的な側面でも、カンガルーケアには大きなメリットがあります。2022年に南オーストラリア大学で行われた研究では、早産児を持つ父親が毎日1時間以上カンガルーケアを行った結果、不安や緊張が軽減され、赤ちゃんとの情緒的な絆が深まったと報告されています。
このようにカンガルーケアは、母親だけでなく父親の育児参加や精神的健康にも重要な役割を果たすことが明らかになっています。
 

十分な正しい知識と医療スタッフのサポートが不可欠

一方で、カンガルーケアを安全に行うには十分な注意が必要です。特に低出生体重児や早産児の場合は、医療スタッフの監視下で慎重に行うことが求められます。2024年の日本産科婦人科学会の報告では、カンガルーケア中に赤ちゃんに異常が起きた場合、対応が遅れるリスクがあると指摘しています。そのため、自宅など医療スタッフがいない環境での長時間の実施は推奨されません。

正期産で生まれた赤ちゃんに対しても、カンガルーケアは安全で推奨されていますが、赤ちゃんの健康状態を確認したうえで実施することが大切です。特に低血糖や呼吸器系に問題を抱えている赤ちゃんについては、慎重に医師や助産師と相談しながら進める必要があります。

また、カンガルーケアを行う母親自身の体調や精神状態にも配慮が必要です。カンガルーケアの実施が母親にとって負担となり、かえってストレスを増やす場合もあります。母親が疲労やストレスを感じている場合には、無理に長時間行うことは避け、短時間でも定期的に取り入れる方法を検討しましょう。

結論として、カンガルーケアは正しい知識と医療スタッフのサポートの下で実施すれば、多くの身体的・心理的メリットが得られる素晴らしいケア方法です。赤ちゃんだけでなく親の心身の健康にも良い影響を与えるため、医療機関でのガイドラインに従って積極的に取り入れることをおすすめします。
 

引用文献:米国小児科学会 (2023). Skin-to-Skin Care Recommendations. WHO (2022). Guidelines on Kangaroo Mother Care. 南オーストラリア大学 (2022). Effects of Kangaroo Care by Fathers on Preterm Infants. 日本産科婦人科学会 (2024). 新生児へのカンガルーケア実施の安全性と課題に関する報告書。

添田英津子先生監修

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