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中耳炎ってなぁに?

中耳炎ってどんな病気?

耳鼻咽喉科医 三塚沙希監修




中耳炎ってどんな病気?
中耳炎は、鼓膜(こまく)の奥にある「中耳」が炎症を起こす病気です。

耳の構造

適切な治療を行わないと「急性中耳炎」「滲出性中耳炎」に移行してしまったり、再発を繰り返す「反復性中耳炎」になったりすることも…。ひどい場合、鼓膜を切る手術をして治療するケースもあります。

日本では0~3歳までに約7割が発症!

中耳炎の症状は?

「耳が痛くなる」、「聞こえづらくなる」、「熱が出る」、「耳だれが出る」、などの症状がみられます。
※耳だれ…炎症によってできた内部の膿(うみ)が、鼓膜をやぶって外に流れ出ること。

耳が痛い、聞こえずらい、熱が出る、耳だれ

中耳炎の原因は?

鼻水の中には菌やウイルスがいっぱい!
中耳炎の原因のほとんどは、なんと鼻水!鼻水には「肺炎球菌」という菌など、細菌が住みついていて、これが耳の中に入ってしまうことにより、中耳炎を引き起こします。中耳炎はくり返しやすい病気でもあるため、通院する手間や費用、おうちでのケアも大変。子供だけでなく、ママたちも苦労がたえません。

 

中耳炎は繰り返す病気?

適切な治療やケアを行わないと、中耳炎は何度もくりかえし発症してしまいます。
「急性中耳炎」を1年に5回以上繰り返す場合を、【反復性中耳炎(はんぷくせいちゅうじえん)】と言います。
「反復性中耳炎」には、「急性中耳炎」だけを繰り返す場合と、「滲出性中耳炎」もいっしょに発症している場合があります。
→ 詳しくは「子供はどうして中耳炎になりやすいの?」をご覧ください。

原因は、
[1] 免疫機能が発達していない
[2] 薬剤耐性菌(薬に耐性のある菌)に感染している
[3] 生活環境(集団保育や両親の喫煙)

…などではないかと言われています。
特に、免疫機能が未発達な1歳未満の小さいお子さんは【反復性中耳炎】になりやすいのです。



中耳炎にはどんな種類があるの?
中耳炎にはいろいろな種類があります。痛みや熱があるもの、ないもの、膿が出るもの、繰り返すもの…。ここでは代表的な中耳炎を紹介します。

急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)

キケン度
症状 耳に激しい痛みや、発熱、耳だれなどの症状があります。
(乳児:不機嫌、高熱、耳漏 、幼児:耳痛、難聴 、学童:耳痛、難聴)
原因 細菌やウイルスで中耳が炎症を起こします。
治療 鎮痛剤で様子をみる。抗菌薬を服用する。鼓膜切開で発熱、耳痛を回避する。
難治性の場合:鼓膜チューブを留置する。
治療期間 通常、投薬開始から数日~10日ほどで治ります。
注意事項 乳幼児や小さい子は、言葉で上手に症状を説明できないので、原因の分からない発熱や、耳を触る、ひっぱる、眠れないなどの様子があったら、耳たぶの後ろの後頭部を指で軽く叩いてみましょう。痛がって泣く場合には中耳炎かも?
放っておくと「反復性中耳炎」「滲出性中耳炎」「慢性中耳炎」になることもあるので要注意です!耳だれが出ると痛みや発熱が軽減したり、軽快することが多いですが、ここまで放っておくと、慢性化してしまう恐れが。早めの治療を心がけて!

急性中耳炎 進行フロー

滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)

キケン度
症状 中耳に【滲出液】がたまる病気。難聴などの症状があるけれど、痛みや発熱はありません。
(幼児:聞き返し、返事をしない、TV音が大きい 学童:難聴、耳鳴り)
原因 「急性中耳炎」が長引いて移行してしまったというケースがほとんど。
治療 耳・鼻の処置をする。抗菌薬を服用する。鼓膜切開で貯留液を吸引する。
難治性の場合:鼓膜チューブを留置する。
治療期間 完治までは、早くて5日程度~1か月、長いと数年かかります。
注意事項 中耳に滲出液が長い間たまっていると、とても危険!細菌の感染が起こりやすくなり、「急性中耳炎」も一緒に発症してしまい、痛みが出てしまうこともあります。「聞き返しが多くなった…」、「呼びかけても聞こえが悪くすぐに振り向かない…」そんな様子があったら、滲出性中耳炎を疑いましょう。

滲出性中耳炎 進行フロー

さらにこわ~い、【慢性中耳炎】についてもご紹介します。慢性中耳炎には、2種類あります。

慢性中耳炎(まんせいせいちゅうじえん)

キケン度
症状 鼓膜に穴が開いたまま、耳だれ、難聴、耳鳴り、まれにめまいがおこります。
原因 「急性中耳炎」にかかった後、急性中耳炎が反復し遷延した場合に、この「慢性中耳炎」になってしまうことがあります。
治療期間 本来、ヒトの耳には、バイ菌を外に追い出す仕組みがあります。中耳に炎症があると、鼓膜に穴が開いて、そこから膿を出して、治そうとします。
注意事項 膿が出ると炎症がおさまるので、この時開いた穴も閉じるのですが、急性中耳炎を繰り返してしまったり、治療が十分でないと、中耳内部の炎症も継続的に起こり、空いた穴がとじなくなってしまいます。この状態が「慢性中耳炎」なのです。

 

真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)

キケン度
症状 イヤなニオイがするだけでなく、この炎症が周囲の骨を壊して進行し、難聴になったり、三半規管まで壊して、めまいがおこることも。
原因 原因ははっきりとわかっておりませんが、乳幼児期の急性中耳炎や滲出性中耳炎や鼻すすりなどが関与していると考えられてます。
注意事項 顔面神経マヒを起こすこともあり、悪化すると顔が曲がってしまうこともあります。治療も大変で、手術による摘出が必要になります。

いかがでしたか?中耳炎は慢性化するととても怖い病気ですね…。

ほとんどの子が経験する急性中耳炎は、原因となる鼻水をこまめに吸引する事、
そして症状が良くなったからといって、薬の服用や通院を途中でやめないことが大切です!


子どもはどうして中耳炎になりやすいの?
鼻と耳は、 「耳管」という管でつながっています。子供の耳管は大人の耳管に比べ、短くて水平になっているので、鼻水が入りやすいのです。

集団生活が感染の原因に
さらに、保育園などの集団生活でお子さんがお友達から風邪をもらってしまい、中耳炎になってしまうケースもとても多いのです。子供は上手に鼻がかめない
極めつけに、子供は5~6歳ぐらいまで上手に鼻がかめません。そのため鼻水がたまりやすく、中耳炎を起こしやすくしています。



中耳炎を治す方法を教えて!
残念ながら、中耳炎は放っておいても自然には治りません。
それどころか、悪化してしまいます。中耳炎かな?と思ったらスグに耳鼻咽喉科や小児科で診断してもらいましょう。
お医者さんが耳の中を調べてくれます。では、もし中耳炎と分ったら、どんな治療法があるのでしょうか?

病院でのケア

抗生剤による治療
中耳炎は、細菌による炎症がほとんどなので、【抗生剤】を使います。この方法だと、3~4日すると症状は軽くなり、10日ぐらいで治ると言われています。それでも治らない場合、薬に対する耐性が強い菌が住みついている可能性があります。
その場合は、お医者さんに相談してみましょう!

鼻から薬液を吸入する、ネブライザー治療
治療の基本は、耳はもちろん、原因となっている鼻やのどの処置・投薬です。ネブライザー治療は、鼻から薬液を吸入する方法です。まず、吸引機を使い、中耳炎の原因となっている鼻水を吸ってもらいます。(※)次に、ネブライザーで薬液を鼻の粘膜に直接噴霧してもらいます。これによって鼻の通りをよくすることができますよ!
※病院での鼻水吸引だけでなく、家庭でのお鼻のケアも重要です。

ひどい時は手術も…
中耳炎の症状によって、鼓膜を切開して膿などを取り出す処置を行うこともあります。
「鼓膜を切って大丈夫??」と心配かもしれませんが、鼓膜は数日すれば塞がります。
でも、手術は子供への負担や費用や考えると、できるだけ避けたいもの。そのためにも、中耳炎かな?と思ったら早めに受診しましょう!

治療は忍耐強く続けましょう
治ったと判断して、途中で治療をやめてしまってはキケン!繰り返し発症してしまう原因になるので、お医者さんに完治したと言われるまではしっかりと治療を続けましょう!



中耳炎を予防する方法はありますか?
中耳炎は、かかってしまうととっても大変。できればつらい思いをする前に、しっかり予防対策をしたいもの。では、どうしたらいいのでしょう?

中耳炎を予防する7つの方法

1. おうちで鼻水をこまめに吸ってあげる

子供の中耳炎のほとんどは、鼻水が原因。鼻水には大量の細菌やウイルスが含まれています。再発を繰り返す方や反復性中耳炎の方は特に、鼻水ケアを念入りにしましょう。

2.「小児用肺炎球菌ワクチン」を接種する

中耳炎の原因菌に「肺炎球菌」というものがあります。これは、小児用肺炎菌ワクチンを打つことで中耳炎を予防できるといわれています。
※日本では、小児用肺炎菌ワクチンは、中耳炎の治療において「承認外の効能」とされていて含まれていませんが、欧米では対象となっています。このワクチンで、米国では7%、フィンランドでは6%、中耳炎にかかる子供が減少したそうですよ!

 

3.ミルクは赤ちゃんの頭を立てた状態で飲ませる

哺乳瓶を使った授乳が原因で「ミルク性中耳炎」になることがあります。これは、授乳のときに姿勢が水平になったことで、ミルクが耳管を通じて中耳に流れこみ、炎症を起こすものです。

できるだけ頭を起こした姿勢(母乳に近い姿勢)で授乳したり、授乳後にゲップさせるなどで防げます!

 

4. タバコの煙を避ける

タバコの煙には、青酸ガスが含まれています。子供はこの青酸ガスの影響を受けやすく、中耳炎になりやすいのです。そのため、喫煙者がいる家庭の子供には中耳炎が多いのだとか。子供はタバコの煙から遠ざけるようにしてあげて下さい!

 

5. おしゃぶりは長い時間使わせない

生後12か月以上経ってもおしゃぶりを使用している子供は、中耳炎にかかりやすいと言われています。おしゃぶりを続けることで、のどや鼻の空間に陰圧を感じ、耳管に悪影響があるからです。中耳炎を繰り返したり、長引いてしまっている場合は、おしゃぶりの使用を中止しましょう。

 

6. 免疫をつける食事をとる

食事にも気を付けましょう。野菜、果物、魚介類などが、免疫増進効果が高いといわれています。
野菜、果物には「ファイトニュートリエント」が、魚介類にはオメガ3という免疫増進物質が含まれています。特に天然の鮭にはオメガ3が最も多く含まれていて、子供にも安全!

 

7. 環境アレルゲンを排除する

ホコリなどの環境アレルゲンは、鼻づまりの原因。腫れを引き起こして耳管を塞いでしまいます。赤ちゃんが眠る部屋は、こまめに掃除をしてあげましょう。

こういった対策が効果的です!日ごろからのケアを心がけましょう♪



中耳炎のときはお風呂に入っても大丈夫?
痛みが落ち着いて、熱もなければ、お風呂に入っても大丈夫!もし心配な場合はお医者さんに相談をしましょう。




中耳炎になりやすい子、なりにくい子がいるって本当?
中耳炎は、なりやすい子となりにくい子がいます。そのちがいは、「体質」が大きく関係していて、遺伝によるものが大きいのです。ご両親のどちらかが以下のような体質を持っていると、子供にも引き継がれる可能性が高くなります。参考にしてみてくださいね。

【耳の中の機能】
中耳内の換気機能・圧力開放機能が弱い:飛行機に乗った時など、耳の中で空気がつぶれる音がしたり、耳鳴りしませんか?

【リンパ組織】
扁桃腺、アデノイドなどのリンパ組織が弱い:扁桃腺の病気にかかったり、風邪をひいた時に腫れてしまった経験がありませんか?

【アレルギー】
アレルギー体質による鼻炎がある:花粉、ハウスダストなどでくしゃみ、鼻水に悩まされていませんか?

中耳炎がなかなか治らないのですが…

抗生剤を飲んでもなかなか治らない…そういう場合は、【薬剤耐性菌】(薬剤に耐性がある菌)に感染しているのかも。抗生剤を正しく処方しないと、【薬剤耐性菌】を増やしてしまう可能性があるので、必ずお医者さんに相談を!治らない中耳炎には、鼓膜を切り開いて、膿(うみ)を取りだす場合もあります。


夜間に中耳炎になってしまったら?

夜間に急な耳痛があり、「中耳炎かな?」と思ったら、耳鼻科の夜間診療所に行くのがいちばんですが、それが難しい場合は、応急処置をしましょう!

応急処置
・保冷シートなどを適当な大きさにカットし、耳を包むように貼って耳を冷やす
・鎮痛解熱剤を使用する

この方法で対処しましょう!しばらく痛みを和らげることができます。でも、これらは応急処置に過ぎないので、翌日すぐに耳鼻科で受診してもらい、適切な治療を受けてくださいね!

耳鼻咽喉科医 三塚沙希監修

 

HEALTHCARE 赤ちゃんのヘルスケア情報


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